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IR情報

投資家の皆様へ
もっと日産化学を知っていただくために

CFOメッセージ

株主資本を最大限活用し、高ROEを維持するために目利き力を高め、付加価値を生む領域に資本を投下する 取締役専務執行役員 CFO サステナビリティ・IR部長 大門 秀樹 株主資本を最大限活用し、高ROEを維持するために目利き力を高め、付加価値を生む領域に資本を投下する 取締役専務執行役員 CFO サステナビリティ・IR部長 大門 秀樹

2023年度の決算の総括
今後も高い収益性を確保し、課題を克服しながら
ROEの向上と株主還元の強化を目指す

 2023年度決算は、売上高2,267億円(前年度比- 1%)、営業利益482億円(同-8%)、純利益380億円(同-7%)と2022年度を下回る結果となりました。ただし、例えば、本業の実力を示す営業利益で言うと、前年度比マイナス8%というレベルは、化学業界全体で約マイナス20%であったことから考えれば、業界平均を大きく超えています。営業利益の減益幅の大半は、世界的な市場調整の影響を受けた半導体事業に起因するもので、同市場の一時的調整要因が収束に向かっている現在、今後の利益水準の回復には自信を持っているところです。

売上高、営業利益、売上高営業利益率

 

 日本の化学業界の足元を見れば、原料価格の高騰、中国の石化製品国産化に伴う市況の低迷が続き、特に石油化学事業の業績は急速に悪化しています。脱炭素対応を筆頭に環境負荷低減の取り組みも本格的にはこれからであり、業界再編や構造改革は長年の課題です。一方、当社グループは1988 年に石油化学事業から撤退し、付加価値の高い製品を自らの研究開発から生み出す価値創造型企業への転進を決断しました。多額の設備投資をして薄利多売を狙うのではなく、研究開発を起点に利益率の高い製品で高い市場シェアを確保し、ニッチトップ企業として社会から求められる存在であり続けたいと考えています。

親会社株主に帰属する当期純利益/ROE

 

 当社グループは、機能性材料と農業化学品のコア中核事業に加えて、化学品とヘルスケア関連の事業も保有し、安定して利益を生み出すことができるバランスの良い事業ポートフォリオを構築できています。会社全体の売上高営業利益率を見ても、減益であった2023年度も21.3%と業界平均の2.5倍以上を維持しており、当社の最大の特徴である「高収益性企業」との見方は何ら変わっておりません。

 ただ、今回の決算数値に表れているように、既存事業での課題も浮き彫りになっています。例えば、化学品事業については、本来収益性の高い製品群の一部に、中国品に比し価格競争力の低下がみられ、収益性が悪化しており、外部環境の変化にさらされても一定の収益性を確保できる事業構造への見直しに向けた検討を始めています。

 財務戦略としては、資本効率を表すROE(自己資本利益率)を最重要の財務指標とし、株主資本を最大限に活用することを目指しています。前中期経営計画(2019-2021年度)では16%以上を維持する目標を掲げ達成し、現中期経営計画(2022-2027年度)では18%以上という目標に向けて取り組んできました。2023年度実績は17.1%でしたが、今後も一層の向上を目指します。

 株主の皆様への還元も引き続き注力します。日本ではPBR(株価純資産倍率)一倍割れに対応して、多くの上場企業が株主還元の強化を打ち出し始めたところです。当社は、2000年代半ばから、ROE目標を定めたうえで、自己資本のボリュームをコントロールするため、積極的な株主還元を継続して実行してきました。配当水準の着実な上昇に加え、自己株取得もほぼ毎年実施することで、足元では、現中計目標である総還元性向75%を超える水準を確保しています。

 今後は、研究開発を強化して付加価値の高い製品を上市するだけでなく、一時的な負債が増えたとしても財務レバレッジをかけてM&Aを実行し、当社の既存事業とシナジーを生み出せる魅力的な技術や製品を外部から獲得することも引き続き検討していきます。

事業領域別の2023年度の売上高と営業利益率 配当総額/自己株式取得額/総還元性向

「選択と集中」をキーワードに、研究開発投資を十分に確保

 研究開発を成長の源泉とすることは、当社のDNAと言っても過言ではありません。付加価値の高い製品を生み出す人材力と研究開発力は当社の財産であり、この経営方針は今後も揺らぐことはありません。

 ただ、2022年5月に発表した中期経営計画「Vista2027」では、2024年度の新製品の売上高170億円を計画していましたが、下ぶれが予想されます。4事業部、企画本部のいずれも計画未達の予想で、成長エンジンとなる新規製品の開発が遅れている状況下、研究開発力を強化するため経営資源をどのように配分していくかは突き詰めて検討すべき課題との認識です。

 新製品の開発テーマにおいては「選択と集中」を進めて、5~10年後に当社グループに何が求められるのか、目利き力を研ぎ澄ませる必要があります。2023年度は、韓国NCKの半導体工場とインドNBRの農薬原体工場の設立など大きな投資が一巡しており、今後は、メリハリの利いたテーマの取捨選択を踏まえ、研究開発への資源配分を十分に確保していきます。2024年度は研究開発費に売上高の7.8%にあたる182億円を投じる計画で、現在注力している情報通信、環境エネルギー、ライフサイエンスの3分野で、当社が目指すべき市場はどこか、深掘りすべきテーマは何であるのかを、今一度見定めて、スピード感を持って投入していきます。

研究開発費/売上高研究開発費比率

 

サステナビリティの取り組みを一層充実
ステークホルダーの声を反映し、期待に応える

 企業の成長には財務的な利益の成長が大切なのはもちろんですが、社会から求められる存在であり続けることが大変重要だと認識しています。振り幅の大きい環境変化のなか、当社グループは「社会が求める価値を提供し、地球環境の保護、人類の生存と発展に貢献する」という企業理念を事業活動の基本とし、企業としてのサステナビリティを追求しています。

 社会動向に合致したサステナビリティ戦略立案と社内外への情報発信の加速を目的とし、サステナビリティ・IR部を設置しています。経済的価値と社会的価値の両輪を回していくため、ひとつの組織としてさまざまなステークホルダーから意見を吸い上げて事業に活かすとともに、投資家の皆様に幅広い情報をお伝えし、さらにそのご意見もいただくというプロセスを大切にします。こうして絶え間なくサステナビリティ追求の舵取りに反映していく狙いがあります。

 また、気候変動を含むグローバルな社会課題に戦略的に取り組み、重要事項などを検討・審議するサステナビリティ委員会は、私が委員長を務めています。特に気候変動課題については、社長をトップとする気候変動対策委員会を別途設置し、審議した内容を取締役会で議論・決議することで会社全体のガバナンスに組み入れて、一元的な課題解決と開示の司令塔の役割を果たしていきます。

 とりわけ、化学メーカーとしての大きな課題の一つが温室効果ガス(GHG)排出量の削減です。当社は、「気候変動の緩和」をマテリアリティ要素の一つに位置づけており、2020年8月に賛同を表明した気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に沿って、情報開示を進めるとともにGHG排出の削減を進めています。日産化学本体のGHG(Scope1+2)排出量削減の長期目標として「2050年カーボンニュートラル」、中期目標として「2027年度までに2018年度比30%以上削減」を掲げています。自社の排出であるScope1+2の2027年度までの30%削減については実現のめどがつき、目標達成に向けて必要な投資を進めています。

 一方で課題となっているのは、サプライチェーンにおける他社の排出となるScope3の削減です。上流のサプライヤーに向けて当社から要望を出していくだけでなく、下流となる取引先のお客様から当社が提供する製品や原材料についての声をお聞きするなかで、取り組みの推進、開示の重要性を実感しています。

 また、気候変動対応に加えて生物多様性の課題への対応も重要だと認識しています。昨年度はTCFDと平行し、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の提言に沿った情報開示の準備を進め、2024年7月に開示しました。

 化学業界全体では、自然界で分解しにくく、水などに蓄積して人への毒性も指摘される4,700種を超える「PFAS(有機フッ素化合物)」の課題もあります。当社グループはPFASのリスクが高い商材は扱っていないものの、国際条約などでPFASを廃絶・使用制限する流れが出始めており、規制が強化された場合の対応も検討が必要と認識しています。他方、こうした規制の流れを新たな需要発掘のチャンスと捉え、要望のあるPFASフリーの材料開発にも取り組んでいきます。いずれにせよ、当社単独では対応が困難な中長期課題も含め、取引先の皆様や業界全体と連携して取り組んでいく所存です。

2027年の企業像実現のため、当社が取り組むべきマテリアリティ(重要課題)を特定 取り組みを推進することで社会とともに持続的な成長を目指す

経済的価値と社会的価値の両輪で持続的な当社の成長に期待していただきたい

 投資家の皆様とESG対話やサステナビリティ説明会などで議論を重ねていくと、当社グループの中長期的な成長に期待していただいていることを強く感じます。こうしたご期待に対し、経済的価値と社会的価値を中長期的な価値向上の両輪と捉え、市場や社会からの期待に永続的に応える使命をブレずに追求していきますし、研究開発を中心として事業を推進する経営方針や資本効率と収益性にフォーカスした事業ポートフォリオは今後も変わることはなく、継続的に利益成長を続けられると自負しています。

 今後も定期的な機関投資家・アナリスト向け決算説明会や、個人投資家の皆様向け説明会に加え、さまざまな機会を捉えて積極的な開示と情報発信に努めてまいります。ステークホルダーの皆様には当社グループの中長期的な成長に、ぜひとも期待していただきますようお願いいたします。

2023年度投資家との対話回数

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