
サステナビリティ
サステナビリティの全体像
人権の尊重
方針・考え方
当社グループでは、「国際人権章典」で挙げられた基本的権利に関する原則および、「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」などの人権に関する国際規範に従い、2019年4月に「日産化学グループ人権方針」を定めました。本方針は、当社グループの事業活動を通じて影響を被る可能性のある、あらゆる個人とグループを対象としています。本方針は、外部専門家の助言を得ながら策定し、取締役会において承認されています。
日産化学グループ人権方針
日産化学グループは、「国際人権章典」、「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」、「国連グローバル・コンパクト」、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」などの国際規範を支持し、日産化学グループ人権方針(以下、本方針)を定め、社員を含む全てのステークホルダーの人権尊重に向けた取り組みを推進していきます。
本方針は、コンプライアンスにおける人権尊重に関する日産化学グループの立場を補完するものです。
- 1)適用の範囲
日産化学グループは、日産化学グループで働くすべての役員および社員に対して本方針を適用します。また、日産化学グループは、ビジネスパートナーやサプライヤーに対して、本方針の内容を支持いただくことを期待するとともに、尊重していただくよう継続して働きかけます。 - 2)人権の尊重
日産化学グループは、すべての人の尊厳と権利を尊重します。出生、国籍、人種、民族、信条、宗教、性別、性自認、性的指向、年齢、各種障害、趣味、学歴、妊娠、言語、経済的背景、政治的見解などのいかなる事由に関わらず、あらゆる差別を行いません。 - 3)人権侵害への非加担
日産化学グループのすべての役員と社員は、人権の侵害や差別を行わないよう求め、間接的にも人権侵害に加担しないように努めます。 - 4)雇用と労働
<強制労働・児童労働の禁止>
日産化学グループは、強制労働、奴隷労働および人身売買による労働を認めません。また、日産化学グループが提供した施設における従業員の移動、離職、退職に不合理な制約を課しません。
日産化学グループは、各国・地域の法令で定める就業年齢に達しない児童労働を禁止します。
<良好な労使関係>
日産化学グループは、組合結成の自由と団体交渉権の承認を約束します。
<適正な労働時間>
日産化学グループは、各国・地域の法令で定める労働時間を超えないよう、従業員の労働時間・休日・休暇を適切に管理します。
<公正で公平な報酬>
日産化学グループは、最低賃金、残業、および法的に義務付けられている福利厚生に関する法律を含め、適用される賃金に関するすべての法律に準拠し、従業員が生活水準を一定以上に保てるよう、公平で公正な報酬を従業員に支払います。
<差別の撤廃>
日産化学グループは、採用や配置、昇進、能力開発における機会均等に努めます。
<職場における健康と安全の確保>
日産化学グループは、従業員をはじめ、日産化学グループの敷地内で働く人たちに対し、安全で衛生的な職場環境を提供します。 - 5)問題発生時の対応
日産化学グループは、自らの事業活動において人権へ負の影響を引き起こした場合は、その救済と是正に取り組みます。
制定年月日 2019年4月1日
改定年月日 2023年1月31日
体制
当社グループでは、人権課題への取り組みを推進するための機関として、サステナビリティ・IR部サステナビリティグループを事務局とするサステナビリティ委員会を設置し、年2回、定期的に開催しています。人権課題への取り組みに関する長中期計画および年次計画、活動結果の評価および評価に基づく改善および検討すべき課題については、本委員会の審議を経て、取締役会で決議しています。
取り組み
当社の事業では、自社やサプライヤーの健康・安全を重要な人権課題と考えています。自社におけるこれらリスクの特定プロセスとしてレスポンシブル・ケアマネジメント活動の中でRC監査を行っています。RC監査とは、レスポンシブル・ケア監査指針に基づき環境安全・品質保証部が、工場、研究所、関連会社でのRC活動を確認する活動です。各箇所が行う内部監査やパトロールに加え、各箇所のRC活動が適切に実施され、PDCAサイクルが着実に回っているかを実際にチェックします。このRC監査において、健康・安全に係る顕在化した問題、または潜在的なリスクがあれば、明確に示して改善を促しています。2022年度は、7箇所にて改善計画/軽減計画の策定を実施いたしました。
また、重要な原料、中間体、製品のサプライヤーや製造委託先に対しては、人権・労働、環境への配慮、健康と安全、倫理などの項目を含むサステナビリティ質問票への回答をお願いしリスクの洗い出しを行っています。必要に応じて訪問監査を実施して、サステナビリティ活動、とくに、環境・健康・安全 (EHS) への取り組みを詳細に確認しています。
従業員の意識向上・啓発活動
人権方針の考え方を従業員に浸透させることや、人権尊重を実践するための理解促進などを目的として、2020年度は経営層を対象とした集合型研修を実施しました。また、2021年度からは、全従業員を対象として当社グループの人権方針を含む「ビジネスと人権」に係る内容のe-learningを実施しています。
<人権研修の内容>
経営層向け研修
- 人権デューデリジェンスの重要性について (2020年度実施)
e-learning研修
- 日産化学グループ人権方針
- ビジネスと人権の基礎知識
ハラスメント対策
妊娠・出産・育児休業・介護休業などに関するハラスメント、セクシャルハラスメント、パワーハラスメントの3つのハラスメントは、就業規則で懲戒事由に該当すると定めています。また、イントラネット上に説明資料、相談窓口を掲載し、社員は誰でもいつでも閲覧・相談が可能な仕組みとしています。
<ハラスメントに関する研修>
- 全従業員を対象に受講必須として研修を実施(2023年度)
- 全管理職を対象に研修を実施(2021年度)
- F4職 (工場の班長相当職) 昇格要件研修の中で、基礎知識を学ぶ研修を実施
(2013年に開始、毎年15名前後、累計で100名以上が受講) - ラインケア※研修の中で、職場でハラスメントが発生した場合のラインケアを学ぶ研修を実施
- 管理監督者が行うケア。日頃の職場環境の把握と改善、部下の相談対応を行うことなど。
強制労働と児童労働の禁止
当社グループは日産化学グループ人権方針の中で、児童労働および、奴隷労働や人身売買を含めたすべての強制労働を禁止しています。
児童労働の発生防止のため、採用時には年齢確認を徹底しています。また、強制労働防止のため、パスポートなど従業員の移動の自由を制限しかねない重要書類の会社による保管は行いません。
労働時間の適正化
長時間労働の削減を目的として、様々な取り組みを進めています。
■具体的な取り組み
- 労働時間、年休残日数などのタイムリーな把握、見える化が可能な勤務管理システムの導入
- ノー残業デーの導入
- 年休取得推進(年間最低10日、一斉計画年休2日、個人別計画年休3日の取得などを奨励)
- 管理職を対象とした労働時間管理に関する研修の実施
人権デューデリジェンスの取り組み
当社グループでは、人権への負の影響を特定し、軽減する「人権デューデリジェンス」の仕組みの構築に取り組んでいます。2020年度は、外部専門家の協力を得ながら、主要な事業及びそのバリューチェーンを対象とし、事業活動を通じて人権に負の影響を与えうるリスクの洗い出し、評価を実施しました。また、その結果について見解の一致・相違の確認や、ステークホルダーの意見を取り入れることを目的として、ステークホルダーとの意見交換を行い、評価結果に反映し、当社グループの対策優先リスクを特定しました。
<人権リスク評価プロセス>
人権課題・リスクの 洗い出し |
UNEP FI (国連環境計画金融イニシアティブ)Human rights Guidance Toolなどの各種人権に関するガイダンス及び、リスクアセスメントなどの既存の当社内部情報をもとに、当社の事業活動において生じうる人権課題(人権リスク)を洗い出し、当社のバリューチェーンのどの段階で発生し、誰にどのような影響を与えうるかを整理しました。 |
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人権リスク評価の実施 | 整理した各リスクについて、「人権への影響」と、「当社とのつながり」について評価を行いました。「人権への影響」は国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)に基づき、「影響(重大度)」と「発生可能性」を評価しました。「当社とのつながり」は、デンマーク人権研究所の『人権優先度の弧』の考え方に基づき評価しました。 |
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ステークホルダー・ 有識者との ダイアログの実施 |
評価結果をもとにステークホルダー、有識者と意見交換を行いました。 ステークホルダーからいただいた助言を踏まえ、人権リスクを再評価し、人権リスクマップを作成しました。 |
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対策優先リスクの特定 | 人権リスクマップから当社の対策優先リスクを特定し、その結果をサステナビリティ委員会で協議し、取締役会で決議しました。 |
<リスク評価において考慮した人権指標>
・健康と安全 ・長時間労働 ・賃金および福利厚生
・適正・公正な労働条件 ・懲戒処分
・職場における差別(女性やマイノリティ等への平等な機会の提供含む)
・非人道的な扱い(ハラスメント含む) ・結社の自由と団体交渉権
・言論・表現の自由 ・個人情報漏洩やプライバシーの侵害
・操業国や地域の慣習等 ・知的財産権の侵害 ・強制労働(人身売買含む)
・児童労働(若年労働含む) ・移民労働(外国人労働者を含む)
・製品の安全性(製品の誤用含む) ・責任あるマーケティングと情報の自由
・商品・サービスに関わる差別などの人権侵害(広告物を含む)
・天然資源の利用(水資源含む) ・治安(国家による警備提供等)
・土地へのアクセス(強制移住含む) ・賄賂と腐敗
・マネーロンダリングと透明性(租税回避含む) ・人権の認識が低い国との関係
・紛争鉱物 ・反社会的勢力との関係 ・救済窓口へのアクセス
<ステークホルダー・有識者との意見交換>
ステークホルダー・有識者 | コメント(一部) |
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佐藤暁子氏 ・ことのは総合法律事務所弁護士 ・認定NPO法人ヒューマンライツ・ナウ事務局次長 ・国際人権NGOビジネスと人権リソースセンター 日本プログラムコーディネーター ・日弁連国際人権問題委員会及びビジネスと人権 PT幹事 ・ビジネスと人権ロイヤーズネットワーク 運営委員 |
・日本の「長時間労働」は、国際的には強制労働とみなされかねない環境にある。人権リスクとしての重要度は高くするべきと考える。 ・新型コロナウイルス感染拡大の禍中において、社内における感染症対策が重要視されている。これまでと異なる勤務形態や、リモートワークに伴うメンタルヘルスの課題の増加など、WHOなどでは新しい状況での健康状態のリスクにも注目している。 ・人権リスク課題の中に「ステークホルダーの救済へアクセスする権利」を入れることが重要と考える。特定された人権リスク、または潜在的なリスクへの、対応を考える際にも重要となる。 |
関正雄氏 ・損保ジャパンCSR室シニアアドバイザー ・明治大学 経営学部 特任教授 ・経団連 企業行動憲章タスクフォース 座長 ・経団連 ビジネスと人権タスクフォース 座長 ・企業市民協議会(CBCC)企画部会長 |
・人権に関しては、実際には優先順位をつけて個々の課題に取り組む必要があるが、まず国際人権章典などに示された国際行動規範の全体的理解や、企業に何が求められているかの理解が重要であることを、常に意識していただきたい。 ・新設するインドの製造拠点における人権リスクに関しては、インドの中でも地域ごとの人権リスクを見ていかなければならない。国ごとの人権課題についても、国際弁護士や国際NGO・人権機関など、様々な手段を活用し、情報収集されると良い。 ・人権デューデリジェンスはリスクを未然に防ぐための対処として必要であるが、加えて、人権を侵害しないだけでなく、人権を実現するためのポジティブインパクトを生むための取り組み、誰も取り残さないというSDGsの理念に沿った取り組みにも今後進んでいただきたい。 |
日産化学労働組合 | ・グループ従業員の「健康と安全」についてはこれまでも取り組みを進めている分野であり重要度が高い。その取り組みをグループ全体に浸透させるために、更なる経営資源(人・カネ・モノ)の投資をお願いしたい。 ・常態化している「長時間労働」への対策は、具体的な目標(仕事の棚卸など)を設定し計画的に取り組んでいただきたい。特に三交替職場では長年の勤務による健康への影響やディーセントワークの観点から、今後様々な検討が必要になると考える。 ・職場の活性度は業績と連動すると考える。働きやすい環境、働きがいのある組織を目指し取り組みを継続することは、人権リスクの低減には重要です。このような活動を通じ、従業員一人ひとりがハラスメント、さらにはコンプライアンス全般に対する幅広い理解を深めることが、その予防体制の強化にもつながる。そのためには、経営企画部、人事部のみならず、より多くの部門を巻き込み、グループ全体でリスクにコミットすることが必要であり、今後の従業員教育などの積極的な取り組みに期待している。 |
50音順、有識者の所属・役職などは、意見交換当時のもの
<対策優先リスク>
リスク評価及び有識者・ステークホルダーとの意見交換を踏まえ、当社グループの対策優先リスクを特定しています。2021年度は社内アンケートにより、各リスクへの取り組み状況を調査しました。
2023年度は、当社対策優先リスクに関して外部専門家の協力を得ながら、現状把握、および課題明確化を行い、明確化した課題を中心に外部有識者との意見交換を実施しました。
今後もステークホルダーの意見を反映しながら対策を強化していくとともに、人権リスク評価及び対策優先リスクについて定期的に見直しを行っていく予定です。
対策優先リスク | 影響を受けるグループ | 主要な人権リスク | 取り組み状況 |
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救済窓口へのアクセス | 全てのステークホルダー | 人権侵害が起こった際に適切な対処がなされない |
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従業員の健康と安全 | 日産グループ労働者 | 危険、過酷な労働環境(精神的疾病を含む労働安全衛生全般に関わるもの)、火災・爆発 |
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地域社会の健康と安全 | 地域社会 | 火災・爆発、化学品漏洩・農薬散布による地域社会への損害、健康への影響 |
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製品の安全性 | 顧客 | 誤用を含む安全性に問題がある製品の販売 |
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責任あるマーケティング | 顧客 | 適切な製品情報の欠如による消費者の選択の妨害、健康リスクの不十分な説明、予期しない製品関連の危機に対する不適切な対応 |
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サプライチェーンにおける健康と安全 | サプライヤー | 危険、過酷な労働環境(精神的疾病を含む労働安全衛生全般に関わるもの)、火災・爆発 |
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サプライチェーンにおける児童労働 | サプライヤー | 法定就労年齢未満/15歳未満の児童の労働、危険な作業への配置、過酷な労働環境 |
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紛争鉱物 | 地域社会 | 紛争鉱物の含まれた原料の調達・利用 |
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- サステナビリティ質問票および責任ある鉱物調達についてはhttps://www.nissanchem.co.jp/csr_info/communication/supply.htmlをご覧ください。
通報窓口の設置
当社グループは、人権の尊重・差別の禁止を含むコンプライアンス違反の未然防止または早期解決を図るため、「相談ほっとライン」を設置しています。
通報の窓口は、リスク・コンプライアンス室、社外弁護士または社外監査役とし、通報の手段はメール、郵便、電話などを選択できます。通報を受けた場合には、その都度、監査役に内容を報告しています。取締役会は、定期的に内部通報制度の運用状況についてリスク・コンプライアンス室から報告を受けて監督しています。匿名での報告も可能ですが、氏名を明示した場合でも、当制度を利用したことにより通報者が不利益を受けることがないよう配慮しています。