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サステナビリティ

サステナビリティの全体像

社長メッセージ

新商品の開発につながる研究開発に多くの資本を継続して投下し事業の拡大と収益力の強化を目指す 代表取締役 取締役社長 八木 晋介 新商品の開発につながる研究開発に多くの資本を継続して投下し事業の拡大と収益力の強化を目指す 代表取締役 取締役社長 八木 晋介

 地球温暖化による気候変動や異常気象、地政学的リスクの高まりに伴う国際秩序の多極化や経済の細分化、それらを背景としたエネルギー価格高騰や食料危機など、私たちを取り巻く環境は劇的に変化しています。不確実性がより一層高まるなか、社会への価値提供という当社が果たすべき役割はますます大きくなっていると感じています。科学技術の観点では、ChatGPTに代表される生成AI(人工知能)が急速に普及し、身近な場面で実用化されています。AI技術の進展は私たちの研究の場面でも大きく影響すると考えています。

 こうした著しい変化のなか、企業理念「社会が求める価値を提供し、地球環境の保護、人類の生存と発展に貢献する」に基づき、社会課題の解決と、持続可能な発展を強く意識し、環境との調和を図りながら企業価値を向上させ、人々の豊かな暮らしと幸せの実現を目指します。

 2050年に目標を定めた長期経営計画「Atelier2050」では、2050年のあるべき企業の姿を「人と自然の豊かさを希求し成長する未来創造企業」と描きました。そして、2050年への通過点となる2027年の姿を示す中期経営計画「Vista2027」の実現に向け、さまざまな取り組みを進めています。

現有事業のシェア・利益拡大のため、事業ごとに戦略を見直していく

 2023年度の業績については、売上高は前年比14億円減の2,267億円、営業利益は同41億円減の482億円、当期純利益は同31億円減の380億円となりました。9年続いた営業利益の最高益更新記録は途絶え、東日本大震災の影響があった2011年以来の前年比減収減益という厳しい結果となりました。一方、財務指標の中計目標については、ROEは利益低下を受けて目標未達となったものの、売上高営業利益率、配当性向、株主総還元性向は目標を達成し、全体では高い水準を維持できたと認識しています。

 事業別の概観としては、農業化学品事業が好調でした。一方、ファインケミカルを中心に化学品事業が減収、さらに、半導体市況の影響により機能性材料事業も減収でした。

 2023年度の化学品事業は、特に厳しい結果となりました。安値中国品の台頭による一部製品の収益悪化に加え、2024年元日に発生した能登半島地震が影響しました。化学品事業の利益性改善は急務と考えており、これまで以上に選択と集中を加速し、徹底していきます。ただ、業績は厳しいものでしたが、化学品事業における中計施策として一定の成果も得られました。例えば、半導体用途での伸長が見込まれる高純度硫酸の製造設備の増強工事が順調に進みました。また、食品工場排水処理(油脂分解)に用いる微生物製剤「ビーナス®オイルクリーン」において、複数社からの採用を獲得しました。さらに油脂などが固形化したオイルボール、微生物の死骸などの不溶物も分解することを見いだし、油脂分解用途以外への提案も開始しました。

 2023年度の機能性材料事業の業績も厳しい仕上がりで、半導体の市況回復の遅れなどが影響し、前年比減収減益となりました。しかしながら、2024年度後半から半導体市況は回復すると見ており、足元は厳しい状況ですが、需要増加を取り込めるよう積極的な設備投資を行ってきています。具体的には、韓国子会社NCKの新工場(唐津工場)が2023年度に完工しました。立ち上げも順調に進み、顧客承認取得に向けた生産を既に開始しています。また、ディスプレイ材料では、2023年度も光IPSの高シェアを堅持することができました。今後も、利益率の高い半導体材料とディスプレイ材料については、シェア・利益の拡大に向けた施策を進めていきます。一方、無機コロイドでは、地中への効率的なCO2固定化を目的としたCCS材料のコンソーシアムに参加し、新たな取り組みを開始しました。

 農業化学品事業では、インド子会社Nissan Bharat Rasayanのプラントが完成し、殺菌剤ライメイ®や殺虫剤グレーシア®の原体の出荷を開始しました。国内においては、新規除草剤ベルダー®の原体の製造プラントが小野田工場で完工し、試験製造を開始しました。国内外の需要にしっかりと応えられる供給体制の構築が順調に進んでいます。

 ヘルスケア事業では、核酸創薬において、新規候補化合物の創出に向けた戦略的提携契約を締結しました。ファインテックでは、当社でのジェネリック原薬の製造に向けて協業先と技術協力契約を締結しました。

 新製品の創出に関しては、半導体材料では、高NA化に向けたEUVリソグラフィ材料の開発を、ディスプレイ材料では、QD-ELディスプレイやマイクロLEDディスプレイなどの次世代ディスプレイ向けの材料の開発を着実に進めてきています。加えて、二次電池用材料では、電気自動車向け二次電池の構成材料として当社製品が採用され、国内、米国での展開を予定しています。このように2023年度も新製品創出に向けた取り組みで一定の進捗がありました。

 しかし、2023年度の新製品の売上高においては、事業部、企画本部ともに中計目標は未達であり、当社の成長エンジンとなる新製品創出で遅れが発生しています。また、2023年度の業績についても、悪条件が重なったとはいえ前年比減収減益であり、業績を牽引する事業が偏っていることの現れと認識しています。この結果を真摯に受け止め、乖離要因の分析と課題の抽出、戦略の練り直しなど、2025年からスタートする「Vista2027 StageⅡ」の見直しを2023年度から進めてきています。

顧客のニーズを捉えた新製品の開発に向け
継続的に高い売上高研究開発費比率を維持

 当社は、他の化学メーカーと比較して、売上高に対して多くの研究開発費を投じてきています。当社のDNAとして、揺るぎなく研究開発に投資し、力を注ぐことで新たな価値を創出できるという考えが受け継がれてきており、それにより持続的成長を遂げてきました。当社の製品はニッチ製品とよく言われますが、「当社の製品を通じてどのような課題解決を顧客が望んでいるのか?」という顧客ニーズを劇的に変化する事業環境のなかで捉えるため、マーケティング力を高め、研究開発の投資効率も高めていく必要があると考えています。

 Atelier2050では、「精密有機合成」「機能性高分子設計」「微粒子制御」「生物評価」「光制御」の5つのコア技術に加え、「微生物制御」「情報科学」を新たなコア技術として獲得することで、「情報通信」「ライフサイエンス」「環境エネルギー」の3つの成長事業に関する技術や製品・サービスを生み出す姿を描いています。顧客に寄り添い、顧客のニーズがどこにあるかを見定め、7つのコア技術で顧客に貢献する姿を実現できるよう注力していきます。

 足元では、新たなコア技術となる微生物制御技術について、Vista2027の始まる際に生物科学研究所に新設したバイオロジカルグループにて評価技術を含めた技術育成を進めてきています。日本では農林水産省の「みどりの食料システム戦略」のもと、環境負荷を低減して持続的な農業生産を確保するため、2050年までに化学農薬使用量(リスク換算)を50%低減する目標を設定しています。バイオ農薬は化学農薬と異なり、培養、製剤化も重要であることを踏まえ、2023年度は活性評価とともに培養、製剤化にも注力し、技術課題の抽出と評価を進めました。

 また、もう一つの新たなコア技術となる情報科学についても、実テーマにおいてマテリアルズ・インフォマティクス(MI)の検証を進めてきており、2023年度、対象とするテーマの絞り込みを行い、検証を加速させました。さらに、研究所におけるデータサイエンティストの育成も重要な課題と捉え、育成プログラムを実施しました。

中期経営計画「Vista2027」進捗 長期経営計画「Atelier2050」基本戦略と事業領域

「誠実」というアイデンティティのもと
領域を超えた「共創」人材の輩出が目標

 人材は、新たな価値を創造することができ、会社にとってかけがえのない財産です。当社の人材戦略においては、新たな価値の創造と共創を促す基盤・環境づくりを推進しています。2023年度は人的資本に関する戦略を社内外に開示し、自らの領域に閉じることなく、境界を超えた連携ができる人材の輩出を目標に掲げました。

 人材戦略に関わる具体的な取り組みについて説明します。当社は、社員一人ひとりが働くことを通じて生きがいを実感できるよう多様な価値観やキャリア志向を尊重し、それらを業務に活かすことを大切にしています。この考えのもと、2023年度は、社員のキャリアデザインの施策として、キャリア対話や人材開発会議を開始しました。例えばキャリア対話では、「キャリア=会社での仕事経験、異動」ではなく、「キャリア=その人自身の価値観、あり方に基づく生涯の経験」と捉え、「仕事」ではなく「人」に焦点を当てた内容で、上司と部下との間で対話を実施しています。

 また、当社の強みは「誠実」であり、これは当社のアイデンティティです。この強みを活かしながら社員が目標に向かってともに挑戦し、成長し続ける環境を整えていきたいと考えています。その具体的施策として、領域を超えた「共創」人材の輩出に向け、「10%Challenge」を2023年度に開始しました。通常業務の領域外や部門方針では明示されていない領域などで、本人が主体的に取り組みたいテーマに関して年間労働時間の10%を充てて取り組める制度であり、社員の自由な発想とチャレンジ意欲を促進することを目的としています。まだ実施例は少ないですが、制度の活用促進に向けた働きかけを継続したいと考えています。

 さらに、当社は女性活躍に向けた取り組みを推進してきましたが、2023年度、対象者を女性に限定した「リーダーシッププログラム」を実施しました。これからリーダーになることが期待される女性社員の皆さんに、今後のキャリアを築くなかで組織から求められる役割を踏まえて自分なりのリーダー像を発見し、自ら前向きに周囲へ働きかけるチェンジリーダーに育ってもらうことを目的としています。当社は、女性活躍の推進で他社に比べ遅れていると認識しています。今後も関連施策を積極的に進めていきます。

 その他にも、人材育成という点では、先ほど述べた研究所におけるデータサイエンティスト育成に加え、全社的な視点でのDX人材の育成も進めました。また、海外語学留学の再開、海外研究機関への人材派遣など、さまざまな施策を実施しました。

執務エリアで社員に声をかける八木社長

 

サステナブル経営を浸透させる
社会課題解決に貢献する製品を55%以上に

 当社は、基本戦略として、Atelier2050では「サステナブル経営の深化」を、Vista2027では「サステナブル経営の推進」を掲げており、社員へのサステナブル経営の浸透は、企業理念の浸透につながると考えています。

 これまで私は、国内外の事業所で事業所全体に向けた講話を実施し、経営理念の浸透を進めてきました。Vista2027を開始した2022年度には、サステナビリティ・IR部に対し「サステナビリティ」を題目として含む社内説明会を開催するように指示しました。それ以降、各事業所では、ESG・環境経営に関する具体的な計画や施策の実施状況、投資家から見た当社の状況などに特化した説明会も開催されています。

 サステナビリティに関する数値目標については、非財務指標として、2022年4月に見直した3つのマテリアリティに関するKPIをVista2027で掲げています。そして、Vista2027で描いた2027年の姿、ひいてはAtelier2050で描いた2050年のあるべき姿を実現するため、サステナビリティ・IR 部が各KPIの達成状況を確認しています。KPIの達成状況を含め、マテリアリティへの対応状況は、サステナビリティ委員会で審議したのち、経営会議を経て取締役会に付議されます。なお、Atelier2050とVista2027においては、社会課題解決に貢献する製品・サービスの提供により「地球と人の未来のためにできること」を追求する「日産化学サステナブルアジェンダ」を定めました。Vista2027では中計各年度において「社会課題解決に貢献する製品・サービスの連結売上高に占める割合55%以上」という目標を掲げており、2023年度もこの目標を達成しております。

 また、私が委員長を務める気候変動対策委員会では、気候変動に関わるシナリオ分析についての議論を深め、2023年7月に新たなシナリオ分析を対外開示しました。前長期経営計画Progress2030で見据えた2030年までを分析対象期間とした2℃、4℃のシナリオ分析は2020年に公開していましたが、今回は1.5℃、4℃シナリオを用い、分析の対象期間も2050年まで延長した形で改めて分析を行いました。洗い出したリスク・機会の財務インパクトについても公開しています。現在、当社の温室効果ガス(GHG)削減目標(2027年:2018年度比30%以上削減、2050年:カーボンニュートラル)達成に向け、移行計画を策定しているところです。その他のGHG削減に関わる取り組みとして、インターナル・カーボン・プライシング(ICP)を活用した管理会計を開始したほか、設備投資の区分として「GHG削減」を新設しました。また、増益工事でICPを考慮した回収計算も行うように規則を改めました。

 さらに、自然資本に関する情報開示については、「自然への影響」と「自社への影響」の観点から、当社の主力事業である農業化学品事業の農薬に着目してLEAPアプローチを実施しました。分析結果、洗い出したリスク・機会について気候変動対策委員会にて議論・審議を重ね、その結果を2024年7月に公開しました。

 気候変動対策は形式的なものではなく、企業が持続的成長を実現するうえで果たすべき責務であると考えています。また、気候変動に関わるリスクに対応し、それに備えることは、社内外からの信頼につながります。今後も引き続き、気候変動対策に関わる施策を進めていきます。

取締役会のダイバーシティを推進
外部機関による取締役会実効性評価も実施

 2023年6月に新たな社外取締役として竹岡裕子氏が就任しました。これにより女性役員は2名になり、取締役会の多様性が進んだものと認識しています。取締役会の構成については、今後も継続的に議論していきます。

 2023年度は取締役会で自由討議を実施しました。新事業・新製品に関する討議においては、研究開発/技術のバックグラウンドをお持ちである社外取締役の大林氏、片岡氏、竹岡氏から意見を頂戴しました。新たに就任した竹岡氏は、機能性高分子の合成と特性評価を中心とした研究に長年携わっており、機能性材料事業、太陽電池向け材料などについて外部視点からの意見をいただくことができました。総じて深い議論ができたものと感じています。取締役会の議論活性化を図るため、2024年度も自由討議を実施する予定です。

 また2023年度は、外部機関による取締役会実効性評価も実施しました。当社取締役会についての多数の課題とともに客観的な意見を聞くことができ、社内外の取締役、監査役のアンケートおよびインタビュー結果からも取締役会の意義を再認識できました。取締役会実効性評価の結果も踏まえ、まずは「事業毎の重要課題や中長期的な事業ポートフォリオ、経営資源配分等について、議論を深めること」を優先課題として選定し、今後も取締役会の実効性を高める改善策を講じていくことを確認しました。

2025年度からスタートする「Vista2027 StageII」に向けて

 2023年度は、売上高、営業利益ともに中計目標未達でした。そして、「Vista2027」の前半3カ年「Vista2027StageⅠ」の最終年度となる2024年度も、売上高、営業利益ともに中計目標未達の見通しです。中計策定時から事業環境の変化があったとはいえ、売上・利益目標達成の点で課題があったと重く受け止めており、後半3カ年「Vista2027 StageⅡ」の見直しに着手しています。

 Vista2027 StageⅡでは、2030年の当社のあるべき姿を描き、そこからバックキャストして2027年度までの計画を策定しますが、当社グループの成長路線への回帰とその先の持続的な成長のため、現状の市場、事業環境を踏まえて「選択と集中」を加速する必要があると考えています。「新製品・新事業創出の加速化」「現有事業の拡大と収益力強化」の2項目を主要検討項目とし、プロジェクトを立ち上げ2023年度からさまざまな観点で議論を深めてきています。新製品・新事業創出の加速化では、「開発テーマの選択と集中の徹底とその仕組みづくり」「M&A、技術導入、他社との協業の推進」を検討しています。M&Aは農薬だけでなく他の事業でも材料、技術買収を視野に入れています。現有事業の拡大と収益力強化では、「化学品事業のビジネスモデルの再検討と構造改革」「事業領域深耕によるコア成長事業の伸長」について検討しています。

 当社グループが社会に選ばれ、求められる会社であり続けるためには、社会が求める価値を提供し、環境と調和を図りながら持続的に成長する必要があります。当社グループは今後も、これまで培ってきた誠実な企業風土のもと、全社員が一丸となって、ますます多様化・高度化する社会的要請への対応力を強化し、地球環境の保護、人類の生存と発展に貢献する企業グループとして持続的な成長を図っていきます。皆様の一層のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。

 

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