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サステナビリティ

サステナビリティの全体像

社長メッセージ

目指すのは「Must-Have」を生み出し続ける存在激変する経営環境を、新たな成長の契機に 代表取締役 取締役社長 八木 晋介 目指すのは「Must-Have」を生み出し続ける存在激変する経営環境を、新たな成長の契機に 代表取締役 取締役社長 八木 晋介

経営環境認識と成長機会
サプライチェーン強靭化と環境対応に真摯に取り組む

 社長就任から6年目を迎えました。就任当初は、新型コロナウイルス感染症の影響が社会・経済全体に及ぶなか、その対応が最大の課題でした。その後も、米中関係の緊張、ロシア・ウクライナ情勢の悪化、中東における軍事衝突など、企業経営に大きな影響を及ぼす事象が相次いでいます。

 こうした環境変化のなかで、当社がとりわけ重視しているのが安定供給です。既存製品だけでなく、新たに生み出す製品についても、「日産化学なら安心して任せられる」という信頼を獲得することが重要だと考えています。

 地政学的リスクが高まるなか、経済性だけでなく、調達ルートの多角化や生産・供給体制の強化を通じて安定供給を確実に維持できる体制の構築が不可欠であり、当社では各事業部と購買部、その他関連部門が連携して、その基盤強化に取り組んでいます。例えば、天然ガスについては供給元が複数の産出国から調達しているため、価格上昇の影響は受けるものの、必要量を確保できています。一方で、特定企業への依存度が高い特殊原材料については、今後さらに調達先の分散化を進め、サプライチェーン全体の強靭化を図ります。

 また、環境対応に関する社会的要請の高まりも、注視すべき大きな変化の一つです。当社の顧客からも、製品の機能や品質だけでなく、製品ライフサイクル全体での環境負荷低減を求める声が年々強まっています。例えば、電子部品の製造プロセスの省エネルギー化を実現するため、従来は高温で行っていた材料処理を低温で実施したいというニーズが増えており、低温環境でも十分な性能を有する材料開発が求められます。

 さまざまな経営環境の変化を向かい風(リスク)として受け止めるのではなく、追い風(機会)へと転換する視点が重要だと考えています。顧客が新たな課題に直面するとき、そこには、その解決に資する新しい製品・サービス・技術への需要が生まれるからです。地政学的リスクの高まりも環境対応の要請も、成長機会になり得るものと捉えています。当社は、こうした変化の本質を的確に見極め、顧客課題の解決に資する価値を迅速に提供することで、さらなる企業価値向上を目指していきます。

持続的な成長に向けて
機能性材料・農業化学品を基軸に新たな成長を追求

 成長戦略で重要なのは、人々の暮らしや社会を支える領域に、確かな事業基盤を持つことだと考えています。当社は、機能性材料、農業化学品、化学品、ヘルスケアなど、多岐にわたる事業を展開しており、時代や市場環境が大きく変化しても、いずれかの事業が成長を牽引し、またほかの事業が収益を下支えする体制を築いています。このような多様な事業ポートフォリオに加え、「精密有機合成」や「生物評価」「機能性高分子設計」などのコア技術を活かした製品開発力こそが、当社の競争力の源泉です。当社はこれらの強みをもとに、顧客にとって「Must-Have(なくてはならない)」となる価値を生み出し続ける会社でありたいと考えています。

 変化の激しい時代においても、「Must-Have」を生み出し続ける会社であるため、当社は「機能性材料」と「農業化学品」を今後の成長を牽引する分野と位置づけています。

 機能性材料分野では、AIの普及を背景に半導体市場の拡大が続いています。一方、農業化学品分野では気候変動や人口増加を背景に、食料の安定供給という世界的な課題への対応が求められています。「産業の米」とも称され人類の発展を支える半導体と、「食用の米」をはじめ人類の生存基盤を支える農業。両分野に強みを持っていることは、当社の特長でもあります。

 成長領域においては、二つのアプローチを重視しています。一つは、特定市場や顧客の課題に対して技術を深く掘り下げていくアプローチ。もう一つは、製品や技術の用途を横方向へ広げていくアプローチです。

 例えば、半導体材料は、深掘りのアプローチが求められる領域です。半導体の微細化や高性能化に伴い、材料に求められる機能や品質水準は一段と高度化しています。そのため、高まる顧客のニーズに応えながら技術を追求し続けることで競争力を高めていくことが重要です。

 一方、横展開のアプローチでは、無機コロイド材料がその一例です。半導体向け研磨剤としての用途に加え、ガラスコーティング材やオイル&ガス分野など幅広い用途に展開しています。今後も用途開拓を進めることで、新たな市場創出につなげていきます。また、農薬分野においても、既存製品の適用作物の拡大や販売地域の拡充を通じて、製品価値をより広い市場へ展開しています。加えて、従来の「素材単体を提供するビジネス」から一歩進めて、サービスや機器を組み合わせたソリューション型の提案にも力を入れています。例えば、薬剤に専用器具などを組み合わせ、省力化が課題となっている農業現場でも効率的に散布できるようにすることで、提供価値のさらなる拡大を図っていきます。

 化学品事業は、日本のものづくりを支える重要な事業であり、高品質な製品に対する顧客ニーズも根強く存在しています。加えて当事業は、いわば当社の「技術力の土台」をなすものです。アンモニア系プラントの運営を通じて蓄積してきた高度な技術や製造ノウハウは、生産技術人材の育成および当社グループ全体における製造プロセスの差別化に貢献しています。今後は、構造改革を着実に進める一方で、半導体産業向けをはじめとする高付加価値製品へのシフトを加速し、収益力を向上します。

 ヘルスケア事業については、薬価改定や新薬開発の難易度上昇など、事業環境の変化を慎重に見極めながら、将来の成長可能性を追求していきます。現在は、これまで培ってきた材料開発技術と生物評価技術を融合し、核酸医薬を中心とする医薬品や、再生医療に関連する材料の研究開発を進めています。今後は、ヒト用医薬品で得た知見を活かしながら、ペットを対象とした動物薬も視野に入れ、ライフサイエンス領域における新たな価値創出に取り組んでいきます。

事業ポートフォリオとROIC
戦略的な成長投資

 経営資源の配分についてご説明します。当社が重視するのは、収益性と成長性であり、ROIC(投下資本利益率)をその評価指標として位置づけています。高い競争優位性を持ち、適正な収益を確保できる事業に資源を集中することが重要です。事業セグメントごとのROICを踏まえて事業ポートフォリオを見直し、限られた経営資源をどの領域に重点的に配分すべきか、議論を重ねています。

 当社が目指す「Must-Have」を生み出し続ける会社であることは、収益力の源泉でもあります。半導体製造の特定のプロセスにおいて、アジアでも圧倒的なシェアを持つ材料や、狙った雑草のみを少量で効果的に枯らす選択性除草剤など他社が容易に代替できない製品を有していることが、当社の競争優位につながっています。当社が高い業績を維持してきた背景には、こうした競争優位性に加え、資本効率などの指標に基づく資源配分と、事業ごとの採算管理の徹底があります。今後もROICを踏まえながら、高い収益性と成長が期待できる「機能性材料」と「農業化学品」に、経営資源を重点的に配分していく方針です。

 機能性材料事業では、AIサーバー向けをはじめ、最先端・先端世代向け半導体材料の需要拡大が見込まれています。こうした旺盛な需要に対応するため、研究開発から製造販売に至るバリューチェーン全体の強化と拡大に向けた投資を段階的に進めています。2025年度には、富山工場において半導体材料の技術開発、解析・検査能力を増強する「第2分析棟」の運用を開始しました。また、台湾に半導体材料の販売会社である台湾日産化学半導体材料股份有限公司を設立し、顧客対応力の強化にも取り組んでいます。

 農業化学品事業においても、持続可能な農業への要請の高まりを新たな成長機会と捉えています。2025年12月には、バイオロジカル事業の早期拡大を目的として、ブラジルのInnova社へ資本参加しました。今後は、化学合成農薬と同等以上の効果を有するバイオ資材の開発を目指すとともに、同社の製造・販売基盤も活用し、ブラジル市場におけるバイオロジカル製品の普及と事業拡大を推進します。こうした取り組みを通じて、長期経営計画「Atelier2050」における重点技術領域である微生物制御技術の獲得とコア技術化を図り、将来的には環境エネルギー分野への応用も視野に入れていきます。

 こうした資源配分のもと、現時点では、中期経営計画「Vista2027 StageII」で掲げた売上高や利益などの財務目標達成に向け着実に進捗しています。引き続き、中長期的な成長に向けた投資と事業ポートフォリオの高度化を進めていきます。

中期経営計画「Vista2027」進捗 長期経営計画「Atelier2050」基本戦略と事業領域

自社の課題・新製品の創出
新製品創出を加速する戦略構想力の強化

 足元の業績は堅調に推移していますが、持続的な成長をより確かなものにするためには、将来の成長を牽引する新製品群をさらに厚くしていくことが重要です。Vista2027 StageIIでは、新製品売上高を2024年度実績比で2倍以上に増やすことを計画しており、その達成に向けて、現在進めている開発テーマの事業化を加速していく必要があります。

 当社には、長年培ってきた技術力と研究開発で蓄積した知見があります。半導体材料をはじめとする機能性材料事業のように、激しい競争環境のなかでも高いシェアを確保している分野もあり、これらは当社の重要な強みです。一方で、新たな事業の柱となる製品創出をさらに進めていくためには、こうした強みを事業成長につなげる戦略や企画の構想力を高める必要があります。例えば、有機合成や生物評価の技術をライフサイエンス領域においてどう活かすのか、さらには、どのようなパートナーと協業すべきか。こうした技術を事業として展開するための企画・構想力には、なお強化の余地があると捉えています。

 社内においても、こうした力を引き出す仕組みづくりを進めています。各部門では「テーマ評議会」や「検討会」を定期的に開催し、他領域の研究所長や研究部長、関連部門のメンバーも参加しながら、研究テーマの進捗や方向性をオープンに議論しています。研究者が自らのテーマを発表し、異なる部門からの意見を取り入れることで、新たな発想や気付きの“化学反応”を生み出すことが狙いです。

 また、研究開発テーマをより客観的に評価し、必要に応じて方向性を見直す仕組みを整備しています。2025年度から、企画本部の新製品開発テーマについては製品化までのプロセスに複数の判断ポイントを設け、テーマの継続や方向転換を早い段階で判断する仕組みを導入しました。さらに企画本部の組織再編を行い、ターゲットを明確化しました。このように、新製品創出を促す社内基盤は着実に強化されつつあります。

 新規動物用医薬品創出においては、米国メルク社のアニマルヘルス事業部門であるMSD Animal Health社との共同開発を行っています。当社の研究開発力に外部の知見を融合させることで、新たな発想を生み出し、将来の成長を加速できると考えています。

 さらに、これまで研究者個人の経験や知見に依存していたプロセスのデジタル化を進めるとともに、インフォマティクスをはじめとするデータサイエンス手法を活用し、研究開発の効率化と製品化の加速に取り組んでいます。2026年4月には新たにCDXO(最高DX責任者)を設置し、デジタル戦略室と情報システム統括室で構成する「デジタル改革推進部」を中心に、全社DXの一層の推進を図っています。

 こうした取り組みを通じて、現在進めている開発テーマに加え、2030年、さらにその先を見据えた「次の種」も着実に育ち始めています。これらのテーマをより大きな事業へと育てるべく、研究開発のスピードを一段と高め、成長を支える新たな柱の創出につなげていきます。

成長を支える競争優位の源泉としての人材
人材に求める「目利き」「共創」「挑戦」

 新製品の創出と持続的な成長を実現するうえで、最も重要な競争優位の源泉は人材です。どれほど優れた技術も、それを社会や顧客の価値に変える人材がいなければ意味がありません。当社には、技術力を価値に変える「人」の力と、それを支える企業文化が根付いています。私が大切にしている行動特性は、「目利き」「共創」「挑戦」の3 つです。

 まず重要なのが「目利き」であり、特に研究者にとって大切な力です。ここでいう目利きとは、単に有望な技術やテーマを選ぶ力ではなく、顧客の潜在課題や市場の変化を捉え、それを当社の技術や事業機会に結びつける力です。そのため当社では、研究者に営業部門を経験させたり、海外へ駐在させたりする特徴的な人事ローテーションを実施しています。研究施設のなかだけでは得られない顧客の声や現場の熱量に触れることが、実需に基づいた製品改良や新テーマへの着想につながっています。

 次に「共創」です。研究開発は、自分たちだけで完結するものではありません。顧客企業や外部パートナー、さらには社内の異なる部門との対話を通じて多様な知見を掛け合わせることで、新たな発想が生まれます。その前提となるのが、当社が大切にしてきた「誠実さ」という企業文化です。互いに尊重し、相手の立場に立って考え、誰かのためにひと手間を惜しまない姿勢こそが、共創を生み出す土台になります。

 そして3つ目が「挑戦」です。変化の激しい時代においては、自分の専門領域や既存の成功体験にとどまっていては、新たな価値を生み出すことはできません。自らの殻を破り、新しい領域に挑戦する姿勢を持つ人材を増やしていくことが、次の成長を導くと考えています。

 こうした価値観を体現する人材の育成を通じて、新製品の創出と事業領域の拡大を加速していきます。

 

サステナビリティ
新たな事業機会として捉え、取り組む

 サステナビリティの取り組みは、サプライチェーン全体を見据えた対応が必須であると認識しています。例えば温室効果ガス(GHG)排出量をサプライチェーン全体で削減するには、「Scope 3(サプライチェーン上の間接排出)」の管理・削減が重要となります。そこで、当社は原材料を購入している上流のサプライヤー企業に対して、サステナビリティに関する調達アンケートなどの協力をお願いしています。同時に、私たち自身も顧客企業から同様の対応を求められています。脱炭素をはじめとするサステナビリティの課題も、当社のみで完結するものではありません。サプライチェーンに関わるステークホルダーの皆様と一体的に取り組むことが重要だと考えています。

 サステナビリティへの対応は当社にとって事業機会でもあります。例えば気候変動は、当社の農業ビジネスに極めて大きな影響を与えます。地球の気温が上昇すれば、高温に強い植物とそうでない植物の地域分布が変化します。各地域の気候や植生に適した新しい栽培管理技術や最適な農薬へのニーズが生まれ、そこには当社が貢献できる可能性が広がります。当社の気候変動対策委員会の場でも、リスクへの対応だけでなく、化学メーカーとしてどこに価値を見出すかという事業機会について議論しています。会社全体でサステナビリティや気候変動を「自分ごと」として捉え、実践できるよう、私が自ら委員長として全社的な取り組みを積極的に推進しています。

ガバナンス体制
取締役会が「建設的な議論の場」として機能

 当社は、代表取締役会長と代表取締役社長の2名の代表取締役を置いています。社長である私は、執行のトップとして社内の業務執行に責任を持ち、意思決定とその実行を担っています。一方、会長は、取締役会議長および指名報酬諮問委員会委員長として、取締役会による監督機能の強化やガバナンスの充実を担っています。このように執行と監督の役割を明確に分けることで、健全な牽制機能を確保するとともに、迅速な意思決定を可能にしており、当社はこの体制を健全かつ合理的な体制であると考えています。取締役会は、社内取締役6名、社外取締役4名の体制で適切なバランスが確保されていると捉えています。取締役・監査役全体では、社外比率は50%であり、女性比率も29%となっています。多様な経験や専門性を持つメンバーが、それぞれ異なる視点を持ち寄ることで、実効性あるガバナンス体制を構築しています。

 社外取締役に対し、質の高い情報をインプットする仕組みも重視しています。取締役会で付議される内容を事前に説明する機会を設け、社外取締役がしっかり準備できる体制を整えているため、取締役会では極めて活発で自由な議論が行われています。

 具体的には、「過去の目標達成はあくまで通過点。次にどのような会社を目指すのか」「地政学的リスクがあるなかで、半導体やディスプレイ材料の海外展開をどう進めるのか」といった質問に加え、カントリーリスクの高い国での事業拡大を想定する場合の留意点など、中長期を見据えた成長戦略やリスク対応について、社外取締役から厳しい意見や指摘をいただいています。こうした議論を踏まえ、海外展開におけるリスク管理については、今中計の重要なテーマと認識しており、2025年度は「投資におけるリスクテイクの考え方」を議題とする意見交換を取締役会の自由討議にて実施しました。

 年1回、「取締役会の実効性評価」も実施しており、実効性は十分に確保されているとの評価を得ています。今後も企業価値向上に資する体制づくりを検討していきます。

信頼を基盤とした持続的な企業価値向上
誠実な企業活動を通じて信頼される企業であり続ける

 当社は企業理念に基づき、社会が求める価値を提供することで、地球環境の保護と人類の生存と発展に貢献することを使命としています。当社の製品が、各種デバイスの進化、食料の安定生産、医薬品の提供やヘルスケアソリューションの向上に結びつき、人々の豊かな暮らしに貢献していくこと。さらに、企業理念に掲げる「地球環境の保護」に取り組むこと。ここに日産化学の成長の源泉と社会的価値があります。

 こうした使命を果たし続けるためにも、コンプライアンスの徹底は不可欠です。法令・社会規範に反する行為は、企業の信頼を一瞬にして失わせます。当社は、全従業員が「極めて誠実であり続けること」を大切にしています。私自身も従業員に向けて、誠実さと高い倫理観を持つよう継続的にメッセージを発信しています。

 当社は、すべてのステークホルダーの皆様から信頼され、選ばれ続ける企業であるために、誠実さと高い倫理観を礎とした企業活動を徹底し、持続的な企業価値の向上を追求してまいります。引き続きご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。

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