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サステナビリティ

サステナビリティの全体像

社長メッセージ

代替が利かないMust-Haveの製品を生み続けるために「強い情熱で変革に挑む共創者集団」になる 代表取締役 取締役社長 八木 晋介 代替が利かないMust-Haveの製品を生み続けるために「強い情熱で変革に挑む共創者集団」になる 代表取締役 取締役社長 八木 晋介

企業理念と目指すべき方向性を社員と共有
社員とともに、あるべき日産化学をつくっていく

 当社は、1887年に日本初の化学肥料製造会社として創業しました。現在は「未来のための、はじめてをつくる。」というコーポレートスローガンを掲げ、変革する志を胸に秘め事業を進めています。

 創業以来、その時々の事業環境の変化に応じて変容を遂げてきましたが、2022年4月、目指す方向性と存在意義を明確にするため、当社は企業理念を「社会が求める価値を提供し、地球環境の保護、人類の生存と発展に貢献する」と再定義しました。事業環境、社会課題などを踏まえた新たな成長戦略として、2050年に視座を高めた長期経営計画「Atelier2050」と、その通過点となる2027年の姿を示す中期経営計画「Vista2027」を始動させました。

 私は、企業理念や中長期的な会社の方向性は、社員一人ひとりが腹落ちするまで浸透させてこそ意味があると考えています。そのため、企業理念を再定義し、新たな経営計画をスタートさせた昨年4月から、私自身が国内外の事業所に足を運び、事業所全体に向けての講話や、階層別の小グループでの懇談を実施しています。訪問時は、現場社員の皆さんの顔を見て説明し、質問にその場で答えます。そのように社員と直接話をしていくことで、ベクトルを合わせ、ともに挑戦し続ける文化を育んでいます。コロナ禍が落ち着きを見せた今年度、国内の事業所はもちろん、海外の事業所にも積極的に訪問する予定です。

営業利益は9年、純利益は10年連続最高益
Vista2027を着実に推進する

 2022年度の業績については、営業利益は9年連続、純利益は10年連続で過去最高益を更新しました。しかし、Vista2027の2022年度計画比では、原材料費の高騰や市況の悪化などが影響し、営業利益は-12億円でした。

 Vista2027で掲げた4つの基本戦略に関する進捗について説明します。第一の戦略「事業領域の深掘りとマーケティング力の向上」に関しては、新たなコア技術となる微生物制御技術の育成を加速するため、2022年4月に生物科学研究所にバイオロジカルグループを新設しました。また、新たなコア技術となる情報科学についても、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)の検証を行っています。さらに2023年4月には、動物用医薬品の開発・販売体制構築の検討に向けて、企画本部にアニマルケア企画グループを新設しました。

 第二の戦略「サステナブル経営の推進」については、2022年4月にサステナビリティ・IR部を新設し、それ以来、サステナビリティ・IR部が、サステナビリティに関わる取り組みや施策を力強く主導しています。社内外へ、事業部別説明会やESG説明会などを開催し、関連情報を積極的に発信しています。

 また、2022年4月、「日産化学サステナブルアジェンダ」を策定しました。社会課題解決に貢献する製品・サービスの提供により「地球と人の未来のためにできること」を追求する計画です。Vista2027では、日産化学サステナブルアジェンダ対象製品・サービスの全売上高に占める割合を重要業績評価指標(KPI)とし、各年度で55%以上維持という目標を掲げています。初年度である2022年度は、この目標を達成しました。

 第三の戦略「価値創造・共創プロセスの強化」に関しては、2022年11月に人事制度を刷新しました。従来の職能型の人事制度から役割等級制度を導入し、適所適材で人材を登用しています。また、2022年4月にデジタル改革推進部を新設し、全社のデジタルトランスフォーメーション(DX)基盤の整備を進めています。2025年度から始まるStageⅡのデータドリブン体制の本格始動に向け、現在は、データ活用の基盤整備を着実に進めている状況です。オンタイムでのGHG排出量の見える化、物流システムの最適化などのデータ活用を目指します。

 第四の戦略「現有事業のシェア・利益の拡大」では、化学品において、メラミン事業から撤退した後の構造改革として、アンモニア系事業の収益性改善に取り組みました。油脂類を分解する微生物製剤「ビーナス®オイルクリーン」では、CO2削減に向けバイオ燃料の開発などを行うプロジェクトに参画し、油脂排水処理以外の新たな用途の探索を開始しました。

 機能性材料のディスプレイ材料では、IPS液晶用光配向材の深化を図るとともに、マイクロLEDディスプレイなど次世代ディスプレイ向けの材料開発を進めました。半導体材料においては、今後の伸長を見込み、EUV材料の開発力を強化するとともに、多層材料、実装材料のシェア拡大に向けた開発・営業展開を進めました。また、製品供給力強化のため韓国子会社NCKが唐津(Dangjin)工場を新設し、2024年度稼働予定です。加えて、NCKでは韓国や中国の顧客対応をさらに迅速化するため、平沢(Pyeongtaek)にあるR&Dセンターに半導体材料部門を新設しました。無機コロイドにおいては、Oil&Gas材の拡販を進めたほか、地中への効率的なCO2固定化を目的としたCCS材料については、豪国立研究機関および大学と共同で評価を実施しました。

 農業化学品では、殺虫剤「グレーシア®」のグローバル展開を進めたほか、製品供給力の強化を企図したインド合弁会社NBR(Nissan Bharat Rasayan)が2023年3月に商業稼働を開始しました。また、2024年の稼働を目指し、国内の製造プラント建設も順調に進んでいます。

 ヘルスケアでは、創薬において、核酸医薬への人的・設備的な重点投資を進めています。生体材料においては、iPS細胞による心臓の再生医療実現に取り組むバイオベンチャーが治験のために実施した細胞塊の製造で当社の「prevelex®」が使用されました。

代替が利かない「Must-Have」の製品を生み出していく目利き力を高める

 会社全体にわたる大きなテーマとして、当社グループが将来にわたって成長を続けていくには、市場において代替が利かず、これがないと製品がつくれない、またはこれがないと製品が機能しないという、当社独自の製品や技術を生み出さなければいけないという話を社員にしています。私はこうした製品や技術を社会にとって無くてはならない「Must-Have」なものだと伝えています。半導体事業にしろ、他の事業にしろ、当社に求められる技術のレベルはより高度になっています。そうした中で、他社が真似できない、代替の利かない製品や技術を生み出していけば、事業の成長に大きく寄与し、世の中にも貢献します。

 例えば、成長エンジンとなる新しい機能性材料の研究開発にあたって、液晶ディスプレイの製造に必要な配向材や半導体製造に不可欠な反射防止コーティング材など、他社には真似できず当社だからこそ提供できる製品や技術を突き詰めていければ、市場においてMust-Haveなものになり、他社との競争では圧倒的に優位に立てます。

 Must-Haveの製品や技術は容易に生まれません。当社は売上高の8%程度を研究開発に投じており、同業他社と比較しても高い水準だと自負しています。ただ、いくら多額の研究開発費を費やしても、そもそも市場から求められている製品や技術なのか、どれくらいの事業規模に発展する可能性があるのか、いつ製品化して市場に投入するのが最も効果的なのか、そういったことを判断できなければ意味がありません。

 優れた技術でも市場で利用してもらえなければ、価値は低いと言えます。一方で、市場にまだ存在しないけれど、今後はMust-Haveになるであろう製品や技術を提案して、普及させていくやり方もあります。人やお金など限られた資本を成長が見込める事業に投下し、企業価値を最大化させる、事業ポートフォリオマネジメントもとても重要だと考えています。

 そして売上や利益の拡大につながる、Must-Haveな製品や技術を開発するためには、顧客の課題に向き合い、解決することで生まれる市場を見極めるマーケティング力が必要になります。私はこれを「目利き」と表現し、目利き人材の育成に力を入れています。私が繰り返し「Must-Have」や「目利き」の話をするので、社員にはキーワードとして浸透してきたようです。目利き人材は簡単に育つわけではありません。価値創造の源泉は研究であり、毎年採用する総合職の約7割は研究職ですが、研究一辺倒では目利きは培えません。研究職の社員をマーケティング職に異動させ、市場動向を知る機会を与えています。会社として目利き力を高める後押しをしていきます。

地球環境の保護、人類の生存と発展のため、脱炭素に貢献する製品を生む

 昨今は「VUCA(ブーカ)の時代」などと呼ばれるように、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)が増大し、社会が目まぐるしく変転して予測困難な状況にあります。当社も例外ではありません。

 当社グループの経営は、そのような状況下でも、さまざまなリスクを洗い出して想定内の事態に落とし込んで先手の対策を講じることを基本としています。リスクへの対策の遅れは想像力の欠如であり、企業経営においては命取りになる場合もあります。

 その一つが気候変動対策です。気候変動対策についても、当社グループが継続して事業を進めるうえで「想定外の事態」は言い訳になりません。2022年6月、当社は気候変動対策委員会を設置し、私がその委員長を務めています。前長期経営計画で見据えた2030年までを分析対象期間とした2℃、4℃のシナリオ分析については2020年に公開していましたが、気候変動対策委員会にて、1.5℃、4℃シナリオを用いた分析を改めて実施し、2023年7月に公開しました。今回のシナリオ分析では、1.5℃、4℃シナリオに基づく事業へのインパクトと対策、財務上のリスクと機会などを含めて分析し、分析対象期間も2050年まで延長しました。

 当社は、2050年までの温室効果ガス(GHG)排出量ネットゼロを目指しており、2030年までに2018年度比でGHG排出量30%以上削減という目標を掲げています。技術的な観点での検討も進めてきており、どの設備を改善すれば良いかも見えてきています。一方で、GHGを削減する仕組みづくりとして、インターナルカーボンプライシング(ICP)の活用に向けた検討も進めてきています。例えば化学品事業はCO2排出量が多い分野ですが、企業としてICPを管理会計に組み込むことで、事業活動の脱炭素化を進めながら収益増加につながる取り組みを事業ごとで積極的に進めるようにし、社会価値と経済価値の両立を図ります。我々は、気候変動対策をはじめとするESG指標に関する目標の達成状況やその成果を、形式的なものではなく、事業を存続するうえでの喫緊の課題と捉えています。昨年、その姿勢を示すべく、ESG指標に関する目標達成状況が役員報酬に反映される仕組みとしました。

 「社会が求める価値を提供し、地球環境の保護、人類の生存と発展に貢献する」という企業理念を実現するためには、当社がステークホルダーから選ばれ続け、当社の製品が市場から選ばれ続けなくてはいけません。GHG排出量の削減などさまざまな課題を乗り越え、選ばれ続ける企業であることが当社にとっての社会価値であり、それは社会貢献と密接につながっています。

 Vista2027の最終年度である2027年度までに、脱炭素に貢献する製品、そのベースとなる環境エネルギー材料や、CCS材料などの技術創出を進め、「未来のための、はじめて」となる製品の形づくりを進めていきたいと考えています。まずは、StageⅠの最終年度である2024年度までに、技術の種の植え付けをしていくことが重要です。そこから1つ、2つと芽吹いて、その後20年をかけて2050年までに花開くようにしたいと考えています。

 

優秀な人材を確保し、価値共創で未来に挑む

 Atelier2050では、2050年のあるべき姿として、企業の姿を「人と自然の豊かさを希求し成長する未来創造企業」と、組織の姿を「強い情熱で変革に挑む共創者集団」と描いていますが、短期的にも中長期的にも経営課題となるのが労働力不足であり、優秀な人材の確保です。この課題に対する取り組みとして、若手社員の給与を増額するとともに、年功序列ではなく職責・役割に応じて適切に処遇することを目的に、2022年11月に人事制度を刷新して役割等級制度を導入しました。

 2023年度は、これまで行ってきている評価面談とは別に、上司と部下との間でキャリア対話を開始しました。社員が働きやすく、会社の事業も成長するよう、適所適材の配置ができる環境を整えました。さらに、社員の自由な発想とチャレンジ意欲を促進するため「10% challenge」制度も開始しました。これは通常業務の領域外や部門方針では明示されていない領域などで、本人が主体的に取り組みたいテーマに関して年間労働時間の10%を充てて取り組める制度です。個人単位の取り組みだけでなく、より新しいアイデアを発掘するために社内外の同志と取り組むことも可能です。

 2023年4月から、定年延長も開始しました。定年年齢を満60歳から段階的に引き上げ、2032年には満65歳とします。ベテラン社員が培ってきた経験と知恵は会社にとって大切な財産の1つです。存分に活用し、モチベーションを新たにして第一線で活躍してもらえるようにしました。プロフェッショナルのベテラン社員の活躍には大いに期待しています。

 人材は、人財ともよくいわれますが、会社にとって何物にも代えがたい資本です。2050年の組織のあるべき姿を「強い情熱で変革に挑む共創者集団」と描いたとおり、共創と挑戦を後押しする仕組みづくりをこれからも続けていきます。

知識と能力、多様性に富んだ取締役会へと改革し、
当社グループのガバナンスを一層強化していく

 コーポレートガバナンス・コードの改訂等で取締役会のさらなる機能強化と社外取締役を含めた取締役会での活発な議論が求められており、当社グループもガバナンス強化に継続的に取り組んでいます。取締役会は、当社の多様な領域での事業活動について適切かつ機動的な意思決定と執行の監督を行えるよう、取締役会全体として知識・経験・能力等のバランスとジェンダーや国際性、職歴等の面を含む多様性を考慮した人材で構成される必要があると考えています。

 2023年6月、竹岡裕子氏が、当社にとって2人目の女性取締役として新たな社外取締役に就任しました。竹岡氏は当社事業に関係が深い機能性高分子の合成と特性評価を中心とした研究に長年携わり、工学博士の専門性に加えて豊富な経験と幅広い見識をお持ちです。また、竹岡氏の就任により、社外取締役4名のうち半数が女性になります。竹岡氏には、女性が働きやすく、活躍できる会社づくりについても女性視点から貢献してもらえると期待しています。

 当社は、取締役を選定する際の期待される専門性とスキル要件を「企業経営」「研究開発/ 技術」「財務・会計」「法務/リスク管理/内部統制」「人事・人材戦略」「グローバル」と定義しています。優れた人格と人望、高い見識と倫理観を有する、当社取締役に相応しい人材から構成されるとともに、そのバランスと多様性が考慮された取締役会を構成できるよう、今後も継続的に改革を進めていきます。

 また、会長、社長、社外取締役から構成される指名・報酬諮問委員会では、社長・CEOの後継者計画について審議を進めています。私の後継者やその先の在るべきCEO像は何かを描き、求められる資質は何か、どのような人材の階層から絞り込んで人材育成を進めるべきかなどを審議し、取締役会で決議していく予定です。

 当社は、1887年(明治20年)に、高峰譲吉、渋沢栄一、益田孝ら明治時代の先駆者たちによって農業で日本の発展に貢献するという「利農報国」の想いで創業され、2023年で創業から136年が経ちました。創業当時と現在を比べると、扱う商材こそ変わりましたが、サステナビリティという概念が無かった創業時代から現在まで、化学の力で社会課題の解決に寄与して社会の発展に貢献するという強い情熱は変わりません。

 我々は、当社グループだけでなくバリューチェーン全体で変革に挑み、サステナブルな取り組みを進めていくことで、ステークホルダーの皆様から選ばれる企業であり続けます。

 

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