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サステナビリティ

サステナビリティの全体像

TCFD・TNFD提言に沿った情報開示

気候変動に関する戦略(2025年7月更新)

GHG排出削減の移行計画

 当社は、「気候変動の緩和」をマテリアリティ要素のひとつと位置づけており、「2050年カーボンニュートラル(Scope1+2)」を目指し、2024年度に排出量削減計画を策定しました。

 2027年度目標である「2018年度比GHG排出量30%以上削減」に向けては、既に完了している小野田工場ボイラー燃料転換やメラミン製造停止に伴う削減に加え、製造プロセスの改善(硝酸プラントN2O排出削減)や再エネ電力の拡大などの取り組みを進めています。

 また2027年度以降は、再エネ電力の拡大、燃料転換(低炭素燃料・脱炭素燃料)、製造プロセスの改善、カーボンネガティブ技術の導入などにより、2050年カーボンニュートラルの実現を目指します。

GHG排出削減施策

Vista2027(2022~2027年度) ~2040 ~2050
・メラミン製造停止(2022年度実施済)
・小野田工場ボイラー燃料転換(2022年度実施済)
・再エネ電力拡大(非化石証書、PPA)
・省エネの推進
・製造プロセス改善(硝酸プラントN2O排出削減)
・再エネ電力拡大(非化石証書、PPA)
・省エネの推進
・燃料転換(低炭素燃料、脱炭素燃料への転換)および電化など
・再エネ電力拡大(非化石証書、PPA)
・省エネの推進
・燃料転換(低炭素燃料、脱炭素燃料への転換)
・製造プロセス改善
・カーボンネガティブ技術の活用
・カーボンクレジットの活用
シナリオ分析

 TCFD提言では、気候変動に起因するリスク・機会が企業の財務にどのような影響を及ぼすかを把握するため、シナリオ分析を行うことを求めています。シナリオ分析とは、地球温暖化や気候変動そのものの影響や、気候変動に関する長期的な政策動向による事業環境の変化等にはどのようなものがあるかを予想し、その変化が自社の事業や経営にどのような影響を及ぼしうるかを検討するための手法です。

 当社は2020年に、脱炭素社会への移行が実現する2℃シナリオ(移行リスクが顕著)と気候変動が進展する4℃シナリオ(物理的リスクが顕著)における事業リスク・機会の選定、重要性の検討を行い、当社への影響と戦略などについて整理しましたが、2021年に行われた国連気候変動枠組条約第26回締約国会議 (COP26) において、平均気温の上昇を1.5℃に抑える努力を追求することが合意されたことをうけ、2023年7月にシナリオ分析の見直しを実施しました。

参照したシナリオ

1.5℃シナリオ*1 4℃シナリオ*2
・IEA-WEO*3, ETP*4 ネットゼロシナリオ (NZE)
・IPCC SSP*5 1-1.9, 1-2.6
・IEA-WEO 公表政策シナリオ (STEPS)
・IPCC SSP5-8.5
  • *1産業革命以前と比較して、気温上昇を1.5℃以下に抑えるために必要な対策が講じられた場合のシナリオ
  • *2産業革命以前と比較して、21世紀末に世界の平均気温が4℃上昇するシナリオ
  • *3国際エネルギー機関 「World Energy Outlook」(2022)
  • *4国際エネルギー機関 「Energy Technology Perspectives」(2023)
  • *5国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)「Shared Socio-economic Pathway」
分析対象範囲および分析対象期間
  • ●分析対象範囲:化学品・機能性材料・農業化学品・ヘルスケア・企画本部
  • ●分析対象期間:2030年および2050年
リスク・機会の特定プロセス
Step1 バリューチェーンやステークホルダーを明確化し、当社事業に影響を及ぼす要因を整理
Step2 上記シナリオやその他外部情報に基づくリスク・機会の洗い出しを実施
Step3 洗い出したリスク・機会から、発生の可能性、事業へのインパクト(人的損失、財務的インパクトなど)を踏まえ、特に重要なリスク・機会を特定
特定したリスク・機会および主な対応策
シナリオ 要因 バリューチェーン 事業への影響 対象事業 主な対応策
1.5℃
シナリオ
GHG排出に関する規制 上流 リスク ・炭素税などのカーボンプライシング導入、サプライヤーの規制対応・脱炭素投資による原材料調達費増加 全 ・製品への価格転嫁
・原材料購入サイトの複数化
自社 ・炭素税などのカーボンプライシング導入、規制対応、脱炭素投資による操業費増加 ・工場における原燃料転換
・省エネ設備などへの更新
・再エネの更なる導入
・硝酸プラントからのN2O排出ゼロ
(投資予定額:8.3億円)
・製造プロセスの最適化
・インターナルカーボンプライシングの導入による脱炭素投資の推進
機会 ・GHG排出量削減によるカーボンプライシング影響の回避
・エネルギー政策の変化
・エネルギー需要や供給量の変化
上流 リスク ・サプライヤーの再エネ電力調達による自社の原材料調達費増加 全 ・製品への価格転嫁
・原材料購入サイトの複数化
・物流コスト増加 ・物流ルート、システムなどの最適化
自社 ・自社の再エネ電力調達による操業費増加 ・省エネ設備などへの更新
・製造プロセスの最適化
機会 ・エネルギー高効率化・省エネによる運用コストの削減
・資金調達(助成金など)の機会獲得 ・先進的なGHG排出削減の取り組み、および適切な情報開示
環境配慮要請の高まりに
伴うマーケットの変化
下流 リスク ・農薬使用量規制の導入による、農業化学品売上の減少 農 ・環境への影響が小さい農薬の開発
・生物農薬の開発
・バイオスティミュラント技術の修得
・登録国数の充実
機会 ・生物農薬などの需要増加
リスク ・低炭素製品を提供できないことによる売上の減少
・排出量の大きい製品・事業の保持による顧客からの需要低下
全 ・低炭素製品の拡販
・環境配慮型製品・サービスの開発
・革新的な製造技術の確立
・事業ポートフォリオの見直し
・インターナルカーボンプライシングの導入による脱炭素投資の推進
・再エネの更なる導入
・工場における原燃料転換
機会 ・低炭素製品向け部品・素材などの需要増加、売上の増加
気候変動への取り組みに対する投資家などからの要請の高まり 自社 リスク ・化石燃料の大量使用など、気候変動への対策が遅れることによるESG評価や評判の悪化および時価総額の減少、資金調達の難化 全 ・更なるGHG排出削減の取り組み
・適切な情報開示
機会 ・先進的な取り組みや情報開示によるESG評価や評判の向上、時価総額の増加
4℃
シナリオ
気温上昇・異常気象の増加 自社 リスク ・豪雨、洪水、海面上昇などによる浸水により、工場の操業・設備・在庫や、サプライチェーンが影響を受けるリスクの増大 全 ・各工場における主要製品のBCP策定
・リスクに応じた高基礎化/高フロア化の実施
・干ばつや熱波など、水不足による生産能力の低下(冷却能力不足など)、および製品・材料管理コストの増加 ・各工場における主要製品のBCP策定
・既存冷却システムの適正化
・節水、水循環設備の導入
・省エネ対応空調、冷却設備の導入
気温上昇・異常気象に
伴うマーケットの変化
下流 リスク ・豪雨/洪水の頻度・強度増大や、灌漑用水の確保困難による作付面積の減少
・気温上昇による農作物の分布の変化、作付面積の減少
農 ・登録国数の充実
・農薬ポートフォリオの充実
機会 ・害虫・雑草・病原菌の増加や抵抗性の発現による、既存製品売上の増加および新規農薬の開発機会の増加 ・新規農薬の開発
・農薬ポートフォリオの充実
・登録国数の充実
・利用可能な水(淡水)資源の減少および世界的な飲料用水などの需要増加による、殺菌消毒剤の売上の増加 化 ・飲料水用殺菌消毒剤の拡販

全:全事業・企画本部  農:農業化学品事業  化:化学品事業

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特定したリスク・機会の主な財務インパクト
シナリオ 算出方法 財務影響
(# 2027年)
1.5℃
シナリオ
リスク 炭素税などのカーボンプライシング導入、規制対応、脱炭素投資による操業費増加 想定排出量、炭素価格から、カーボンプライシング導入による2030年の操業費増加額を算出
※ 想定排出量基準年(2018年度)実績より排出削減が進まないケースを想定
※2030年炭素価格:140$/t-CO2
IEA WEO2022のNZE参照
59億円/年
自社の再エネ電力調達による操業費増加 2027年の販売計画をもとに、すべての使用電力を再エネ電力に切り替えた場合の2030年の再エネ電力調達にかかる操業費増加額を算出
※ 想定再エネ電力調達単価は、非化石証書価格などを参照
4.6億円/年
農薬使用量規制の導入による、農業化学品売上の減少 みどりの食料システム戦略などの化学農薬規制による2030年の売上減少を算出 23億円/年
低炭素製品を提供できないことによる売上の減少 自社の化学品製造プロセスの脱炭素化が進まず、製品ライフサイクル全体の排出量(PCF)が多い既存製品の販売量が減少した場合の、2030年の売上減少額を算出
※ 既存製品の売上は2021年の実績値を使用
※ 既存製品の販売量の減少見通しについては、IEA Net Zero by 2050などを参照し想定
42億円/年
機会 GHG排出量削減によるカーボンプライシング影響の回避 2027年のGHG排出量削減目標(2018年度比30%以上削減)を達成した際の、カーボンプライシング導入による2030年の操業費増加の回避額を算出
※2030年炭素価格:140$/t-CO2
IEA WEO2022のNZE参照
18億円/年
低炭素製品向け部品・素材などの需要増加、売上増加 需要増加が見込まれる低炭素型製品について、2027年の売上計画を策定し、2021年からの売上増加額を算出 # 12億円/年
4℃
シナリオ
リスク 豪雨、洪水、海面上昇などによる浸水により、工場の操業・設備・在庫や、サプライチェーンが影響を受けるリスクの増大 2030年、2050年を想定し、洪水による拠点浸水が発生した際の財務影響額として、特に影響が大きい生産拠点の操業が停止した期間の売上減少額および設備・在庫毀損額を算出
※ 浸水深の分析には、Aqueduct floodsを使用
※ 浸水による被害率は、国土交通省の治水経済調査マニュアル(案)などを参照し設定
※ 財務影響額は、2021年の拠点売上高、設備・在庫高などを基に、影響が大きい拠点において浸水が生じ、対策を講じなかった場合の最大リスクとして算出
2030年:76億円

2050年:128億円

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シナリオ分析総括

 1.5℃シナリオを用いたシナリオ分析・財務影響の定量化を行った結果、カーボンプライシング導入による操業費の増加、低炭素製品を提供できないことによる売上減少などを重要なリスクとして特定しました。カーボンプライシング導入やライフサイクルCO2排出量の多い製品の需要減少に対しては、これまで取り組んできた工場の原燃料転換や再生可能エネルギーの導入を一層推進するとともに、インターナルカーボンプライシングの活用によりGHG排出削減を考慮した脱炭素投資をさらに推進し、リスクの低減を図ります。

 また、環境配慮要請の高まりに伴うマーケットの変化については、環境への影響が小さい農薬や生物農薬、および二次電池材料などの低炭素製品の需要が拡大すると考えています。生物農薬については、2022年4月に生物科学研究所農薬研究部にバイオロジカルグループを立ち上げ、事業化に向けて研究開発を進めています。また、環境エネルギー分野において、二次電池材料や環境発電材料、CCS・CCUS材料の開発を加速し、実需化を目指します。

 一方、4℃シナリオにおけるリスクとして認識している水害リスクについては、主要な生産・物流拠点の浸水の可能性を重要リスクとして特定しました。本リスクに対しては、工場および主要製品のBCPの策定および随時見直し、工場設備の高基礎化/高フロア化や、製品在庫の確保、重要原料の複数購買などを引き続き行っていきます。

 また、気温上昇・異常気象に伴うマーケット変化において、害虫・雑草などの増加、水不足や感染症の拡大に向け、農業化学品や、飲料水などの殺菌消毒剤などの需要が増大すると考えています。市場成長の見通しを踏まえ、当社の機会の拡大を目指します。さらに、気候変動の影響を受けにくい事業ポートフォリオを構築することで事業活動のレジリエンスを高め、リスクの最小化・機会の最大化に努めます。

気候変動に関する指標と目標(2026年7月更新)

 当社グループの気候変動関連リスク低減に向けては、GHG (Scope1+2) 排出量の約90%を占める日産化学本体の排出量削減が重要であると考えています。このため、日産化学本体のGHG (Scope1+2) 排出量削減の長期目標として、「2050年カーボンニュートラル」、中期目標として「2027年度までに2018年度比30%以上削減」を掲げています。これらは、長期経営計画「Atelier2050」、および中期経営計画「Vista2027」の非財務目標として位置づけ、進捗を管理しています。また、本削減目標に対する達成度は、役員の業績報酬のESG連動部分に反映する仕組みとしています。

中期目標、および長期目標

カテゴリ 指標 対象
範囲
2027年目標 2050年目標
GHG排出量 Scope1+2 総量 単体 2018年度比30%以上削減 カーボンニュートラル

 2018年度以降、メラミン製造停止や小野田工場ボイラー燃料転換、老朽化設備更等による省エネルギー化などにより、GHG排出量を着実に減らしています。2025年度は、富山工場の製造設備トラブルにより予備機を使用して生産を継続した結果、N2O排出量が増加し、GHG排出量が増加しました。なお、当該製造設備トラブルは、2026年6月の定期修繕において解決済みです。また、2026年度に完工を予定している硝酸プラント由来のN2O分解装置設置により、硝酸製造工程で発生するN2Oの大部分を分解できる見込みであり、2027年度のGHG排出量削減目標の達成を見込んでいます。

 当社はGHG排出量およびエネルギー消費量について、2018年度分から第三者検証を受審しており、今後も引き続きGHG排出量削減の取り組みを進め、環境負荷低減を推進していくとともに、信頼性の高い情報の開示に努めていきます。

  範囲 単位 2018 2022 2023 2024 2025 目標 (目標年)
Scope1 単体 t-CO2e 245,469 223,388 174,133 166,980 233,161 -
Scope2 単体 t-CO2e 117,926 104,275 111,187 110,932 97,428 -
Scope1+2 単体 t-CO2e 363,395 327,663 285,320 277,912 330,589 254,377 (2027)
GHG排出量原単位※1
(Scope1+2)
単体 t-CO2e/
百万円
2.33 1.79 1.58 1.38 1.52 -
Scope3※2 単体 t-CO2e 703,562 885,046 927,262 939,244 702,739 -
エネルギー原単位※3 単体 ※4 82.8 63.3 62.0 55.6 51.4 -
Scope1 連結※5 t-CO2e 253,785 230,424 180,409 184,280 248,942 -
Scope2 連結※5 t-CO2e 128,647 115,893 124,730 131,089 116,704 -
Scope1+2※6 連結※5 t-CO2e 382,432 346,316 305,138 315,369 365,646 -
Scope1+2 の連結に
占める単体の割合
  % 95.0 94.6 93.5 88.1 90.4 -
  • 1 排出量/売上高
  • 2 カテゴリ別データ:https://www.nissanchem.co.jp/csr_info/index/esg_data.html
  • 3 エネルギー使用量/売上高
  • 4 2013年度を100とする
  • 5 日産化学本体および、製造施設を有する連結子会社(日本肥糧、Nissan Chemical America Corporation、NCK Co., Ltd.、Nissan Bharat Rasayan PVT. LTD.)
  • 6 四捨五入の関係で、上段のScope 1, Scope2 の和と一致しないところがあります。

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