My Never-ending Chemistory

日産化学には、化学品、機能性材料、農業化学品、医薬品という4つの事業部があり、それぞれの中に事業推進という部署がある。本社の事業部長の膝元にあり、事業部全体の動きに関わっていく部署だ。だが、事業推進の仕事は、幅が広いがゆえに、なかなか伝わりにくいかもしれない。そこで、入社後の最初の配属が事業推進だったE.H.の話を聞いてみよう。

私が所属する機能性材料事業部では、わかりやすく単純化していえば、東京の本社で事業を企画し、千葉や富山の研究所で材料を研究開発し、国内、さらには海外の工場で製造し、日本を含むアジア、アメリカ、ヨーロッパなどのメーカーへ販売している。事業推進部は、そうした全体を見ながら各部署をつなぐ。文字通り、事業を推進させるために存在する部署だ。その中で、私が所属するのは、会計チーム。事業部の予算を策定し、毎月の実績が出たら損益を確認。予算との差異の原因を分析したりして、結果を事業部内や研究所、さらには役員にも報告する。
私は入社後すぐに、この事業推進部 会計チームに配属になった。はじめは、機能性材料といっても、どこで何をつくっているのかすら、よくわからなかった。だが私には、会計の立場として必要な情報を得ることが不可欠だ。どんな製品があって、どのようにつくっていて、どんな取引先があるのか、知りたいし、知らねばならない。本社の営業の先輩が研究所へ行く際などに「ぜひ一緒に連れていってください」とお願いして同行させてもらい、行った先で、いろいろと話を聞く。「こういうことを聞きたい」と頼んだら「だったらこの人に聞けばいい」と紹介してもらえたりする。また、日常の食事の場などでも、部署を超えた交流の場があれば、積極的に参加していく。できるだけ多くの人に直接会って話すことで、学ぶと同時に、その後も連絡をとりやすいようにしていく。
実際に業務を進めていくと、研究所や工場に対して、たとえば「こういう資料を出してほしい」と無理なお願いをせねばならないことがある。「なぜこれをやらないといけないのか?」と問われることもある。会って話をした関係であれば話しやすい。これは実はこういうことに使うから必要なんです、と理由も合わせて伝えたら「それだったら、もっといい資料があるよ」「ここに直接聞いたほうが早いよ」といったアドバイスをもらえることも多くてありがたい。
会計というと、数字だけに向き合っているように思えるかもしれないが、結局は人。私は人を通して事業を理解していったのだ。

大切にしていること

入社の決め手は、少数精鋭で仕事を任せてもらって成長できそうだったことと、何人もの先輩と会わせてもらうなかで誠実さを感じたこと。入社してみたら、実際、その通りだった。というより、それ以上だった。たとえば、台湾への出張も、2回目から、つまり入社1年目の夏頃からは1人で任されて行っている。“こんなに任せてもらうの?”と驚くことが多い。そして、みなさんの誠実で責任感あふれる仕事ぶりには感心させられることが多い。私自身もそうした社風に恥じない人でありたいと思う。

入社1年目から、私は、海外グループ会社の台湾日産化学股份有限公司(NCT)の担当をしている。
それまで、NCTの会計業務は、本社からグループ統括会社としての指示を出し、その管理のもとで行ってきた。それを大きく変え、グループ会社が本体に頼らず、自律的に会計を行えるようにするプロジェクトが進められようとしていた。私は、NCTに対して、その取り組みを実行していく役割を与えられた。
NCTには、会計担当のローカル社員がいる。彼女は日本語ができるが、それでも、会計の特別な用語や日産化学ならではの用語がある中で、考え方を伝えていくのは難しかった。そもそも私自身がまだ1年目でしっかり事業や会計について理解できていない段階だっただけに、なおさらだ。伝えるのがまどろっこしいから、“だったら自分でやってしまった方が早い”と作業を進めてしまったこともあった。
だが、あるとき先輩に、「ある程度任せることで現地の社員も成長するから、思い切って任せてみたら」といわれ、不安に思いながらもそうしてみたら、彼女はより頑張ってくれて、確度も上がり、効率も良くなった。そして、そうしたやりかたに、やりがいを感じてくれた。人と協働していくということについて、自分の中で1つ大きな気づきになったできごとだった。
私はその後も、月に1回のペースで台湾へ出張に行き、実際に会ってコミュニケーションを重ねている。よい信頼関係で仕事を進められていると思う。
さらに今では、他の国のグループ会社の会計担当と一緒に仕事をすることも増えた。日本の会計と、台湾や韓国、アメリカの会計は、それぞれ違う。それぞれの法律や規則をもちろん守りながら、グループを1つとして管理する必要がある。それだけに、海外の担当者と密に話をして、ここはこのように管理しましょう、と方針を決めていくことが大切だ。相手をよく知り、相談し、そのうえでハッキリと決める。大事な仕事を担当して、一つ一つ進めている実感がある。

私を取り巻く環境

会計チームの先輩には学ぶことが多い。特に、ラストマンシップというのだろうか、“数字の最終的な確認するのは自分だから、全部きちんと把握する”という使命感をすごく強く感じる。私が、別の部署からもらった資料をそのまま使おうとすると、「これ、本当に合ってるの?」と問われたりする。確かめてみたら、もらった数字に誤りがあったこともある。それ以来、より意識して取り組むようになった。責任ある仕事は、楽ではないが、そのぶんやりがいがあり、より成長できると思う。

入社2年目以降、担当する業務の幅が広がってきた。台湾の担当だけではなく、日産化学本体の事業部の会計、予算や決算にかかわる業務も多く担当するようになった。そして、1年目には、なぜこの作業をする必要があるのか、その業務がどこにつながっているのか、正直わからないまま手だけ動かしていた時もあったが、2年目以降は、自分なりに体系的に理解したうえで業務を進められるようになった。

事業推進部では事業全体を俯瞰して知ることができる。それが、この仕事の醍醐味だと思う。研究して、製造して、販売して、最終的に資金を回収するところまで。その一連の流れに関わろうと思えばすべて関わっていける。
研究所や工場の先輩たちとやり取りする中で、会計に直接関係がなくても、「今、こういうことが大変なんだよね」などと教えてもらったり。逆に会計的な知識で「こういうことを知りたいんだけど、ちょっと教えてくれないか?」と頼まれたり。そうしたことの積み重ねで、より事業を立体的に理解できてきたと思う。
何より、みなさんが、自分の携わっている仕事のことを大変そうながらも楽しそうに話してくれる。それに接するのはすごくうれしいことだ。みなさんの仕事を、事業推進という立場からサポートしていきたいと強く思う。

最近では、私が自分で判断して回答したり決定したりする機会が、徐々に増えてきた。今後は、業務改善にも取り組んでいきたい。以前の私は、従来のやり方そのままで進めることで精一杯だったが、最近では、本当にそれが一番いいのかな、もっといい方法があるのでは、と思うことも出てきた。そこで、上司や先輩に「この業務の見直しを、やってみていいですか」と聞いたら、一も二もなく、やらせてもらえるようになった。たとえば現在、海外グループ会社と本体との連結損益管理の重要度が高まっている中で、機能性材料事業部として独自の仕組みを、日産化学が全社的に行っている手法の枠を超えてつくっていけないかと構想している。
機能性材料事業は、とても動きが早く、製品や事業の成長に、会社の仕組みが追いついていない場合もある。企画や営業、研究や製造の人たちが、より活動しやすいようにサポートするには、事業推進も成長せねばならないと思う。もちろん、そのためには私自身も。

My Never-ending Chemistory

私の仕事によって、事業に関わる人たちに、
より力を発揮してもらえれば。