My Never-ending Chemistory

日産化学の工場には、高温・高圧の大型プラントからクリーンルーム内の先進機器まで、多種多様な電気設備がある。それらを、いかに建設し、いかに安定して稼働させながら磨きをかけるか。大きな役割を果たすのが電気系技術者だ。その人数は決して多くない。それだけに、任される仕事は幅広く、重要だ。小野田工場で活躍するT.U.に話を聞いた。

もともと私は、ロボットの制御に興味を持っていた。ロボコンにも興味があり高専に進み、そのうち制御をもっと学びたいという意欲が湧いてきて、大学へ進み、研究が楽しくなって、大学院へと進んだ。

研究室は電力関係で、私が主に研究したのは電力会社の技術者の方々と受電所で共同研究をし、電力機器の故障や劣化の診断方法を研究するというものだった。アメリカの航空機メーカーの新型機開発に参加し、落雷した際の放電現象を研究しにマサチューセッツへ行ったこともある。最先端のモノづくりに、わずかではあっても携われたのは、すごく楽しかった。そんな経験を重ねる中で私は、電力を供給する側よりも、電力を使ってモノをつくる側のメーカーで仕事がしたい、と考えるようになった。

はじめは、直接モノをつくる電機メーカーなどが候補で、化学メーカーには目が行っていなかった。だが聞いてみると、農薬や化学品など生活を支える基盤となるような製品をつくるという仕事に興味をもった。日産化学を工場見学すると、プラントの保全を若いうちから任されるし、新しいプラントづくりにも関わって機器を自ら選定したりもできる。幅広い仕事を担当していけると聞き、やりがいもあり、おもしろそうだなと思った。

仕事を通じて学んだこと

保全には保全の難しさや面白さがある。私が直接担当する電気的な計装品だけでも数百もある。何かが壊れてから対応して直しているだけではダメで、どう予測をして計画的に対策をしていくか。それが腕の見せどころだ。モノづくりの最前線で、いかに安定して製品を送り出せるかが私たちの仕事にかかっている。

私の担当している業務は、大きく分けて2つある。1つは、工場全体の受電のシステムであり、もう1つは個別のプラントの担当だ。

入社2年目には、工場全体のメインケーブルの入れ替えを担当した。メインケーブルは、受電装置から各プラントへ電力を供給する大元のケーブル。入れ替えにあたっては、工場が2日間、全停電となる。各プラントと調整をして、生産にできるだけ影響の少ないスケジュールを立てねばならない。また、どうしても停電してはならない機器は、どのように非常電力で動かすかも計画する。そのためには、どこのプラントに、どんな機器があり、何をどのようなスケジュールで生産しているかを把握せねばならない。各プラントの担当者にヒアリングをすると、プラントごとに、課題や目標が異なることが分かった。そこには、担当している人の考え方や想いも反映されている。それらを知るたびに、仕事がどんどん楽しくなっていった。

各方面の協力のもと、無事、入れ替えが完了したときにはホッとした。今後、工場全体の受電を安心して任せてもらうためには、もっと技術者とコミュニケーションを密にし、すみずみまで把握できるよう、勉強をしていく必要があると感じている。

私を取り巻く環境

業務では、たとえば建築分野など、思いもしなかった分野の知識も必要になった。今後は情報セキュリティー関係の知識も重要になるだろう。一人の技術者が、そこまで幅広く関われるということは、とてもおもしろいし、日産化学での仕事の魅力だと思う。

もう一つの私の仕事は、各プラントの新設や保全も担当だ。新設では、動物薬の原薬「フルララネル」の製造プラントを担当した。プラントの機器や計装品を自分たちで選定し、配置や取り回しなどを考える。さらに、プラントの制御部分も、製造課のメンバーと一緒になりながら考えていった。

化工系の技術者から「こういう制御をしたい」といった意見をもらい、先輩からは「このような個所はトラブルが起こりやすい」といったアドバイスを受けて、進めていく。3DCADで描いた配線や配管が、実際にカタチになっていくのは楽しくて仕方がなかった。

印象的だったのは、減圧の制御。複数の減圧器を連結させて製品を徐々に減圧させる工程で、外部の会社には3つの減圧器が必要だとされたが、私なりに検討し、うまく組み合わせれば2つで可能だと考え、提案した。できるだけシンプルなほうが故障のリスクも減るし、運用や保全もしやすいはず。検証を経て2つの案が採用された。初めてのテストの時には不安がいっぱいだったが、懸案の減圧もうまく行き、 “良い製品ができた”と聞いたときは本当にうれしかった。

キャリアの浅い私でも、なんとかプラントの新設プロジェクトで責任を果たせたのは、別のプラントの保全を2年間担当して基礎的な知識を得ていたからだ。保全と新設の両方を体験しながらモノづくりに関われることは魅力的だと思うし、技術者として成長につながると思う。

My Never-ending Chemistory

工場を知るほどに、
学びたいことが増えてくる。
より幅広く、奥深く、力をつけたい。