My Never-ending Chemistory

工務課の基本業務はプラントの保全。そこには安全、コストダウンをテーマとした継続的改善という業務が含まれる。K.I.は自分に期待される役割を、もっとクリエイティブな活動と受け止め、長年未解決になっていた問題にも挑んでいく。枠に収まらない発想と行動で、プラントをより良くしていこうとするK.I.の思いとは。

いつも何か新しいテーマに挑戦したいと考えている。学部時代にはバリバリの機械屋さんだったが、大学院ではチャレンジして知見を広げようと化学寄りのテーマを選んだ。日産化学に入ったのも同じ理由、つまり早い時期からチャレンジさせてもらえる社風と理解したからだ。

実際、入社した年に挑戦すべき格好のテーマを見つけた。1年目のセルフスタート研修で取り組んだのが、高温時のチタンの特性解明。プラントを構成する重要な部材チタンが、プラント稼働時の高温にさらされ続けた結果、どのように変容するのか。その特性が明らかになれば、プラントの余寿命の評価が正確にできるようになり、補填のタイミングも明確になる。材料メーカー数社と約半年かけて共同試験を行い、出した結果は、今では社内で「富山スタンダード」と呼ばれるプラント保全の基準となっている。

このテーマは、もともと私が入社する前からプラントの課題になっていて、工務課としていずれ取り組みたいものだったとは聞いたが、それを入社1年目の私に担当させて予算を付けて任せるのは、自分の入った会社ながら、なかなかすごい会社だなと思う。

大学で学んだこと

学部時代には機械屋として設備設計や強度計算などに取り組んだ。大学院では化学に寄り、新規材料の開発に取り組んだが、その際に役立ったのが機械の知識。新しい材料開発には、設備もゼロから開発する必要があるからだ。そうした経験が今の仕事に活きている。大学院で化学寄りの研究をしたときに、使っていたのが日産化学の無機コロイド材料。それを見てふと会社研究してみたのが、入社のキッカケとなった。

富山工場ができたのは、今から90年以上前の1928年。主要なプラントは、軒並み、半世紀程度の歴史を持っている。それだけに、これまで問題視されながら誰もが手をつけることができなかった案件がいくつかある。いずれ誰かが解決しなければならないのなら、自分がやりたい。そう思って2年目には、メラミンプラントの水素脆化問題に取り組んだ。これは50年以上前から未解決の問題、つまり富山工場では難関のテーマだ。

もちろん自分一人では解決できないから、必要な技術を持っていそうな大学の研究室を論文から探し出し、共同研究を持ちかけた。メールを送って教授に会いに行き、合意を取り付けたのだ。この産学連携共同研究により、チタン1種の水素脆化挙動が世界で初めて明らかになった。2年目のセルフスタート研修の時間は、すべてこの共同研究に使い、メラミンプラントの問題が解消された。

その次に取りかかったのが、新しいガスケットの開発で、これも世界初の試みと言える。メラミンプラントが立ち上がって以来、ずっと同じガスケットを使い続けていて、漏れの問題が常につきまとっていた。ガスケットの材質は良いのだが、構造に問題がある。そこでガスケットメーカーと新たな構造の開発に取り組んでいる。基本的な形状を、通常のガスケットの面タイプから一新し、特殊な形状を開発しようとしている。この形状に加える材料の最適化が現状の課題で、来年にはプラントに実際に組み込む予定になっている。

私を取り巻く環境

担当するプラントの数が増えてきて、さすがに忙しさを感じる。トラブルは起こるのが当たり前なので、日々どこかで起こるが、チームでうまく対応することができている。残業することはほとんどなく、プライベートでは頭を完全に切り替えられる。だから、また新しいことに挑戦できるのだと思う。

メラミンプラントに関しては、ガスケット問題が決着すれば、未解決の問題はなくなる。そこで次の課題となるのが、問題そのものを見つけることだ。現在稼働中のプラントは、既に43年間使われ続けている。機器設計の際の基本的な耐用年数を超えており、既に未知の領域に入っている。いつ何が起こってもおかしくないのが実状だ。実際、昨年には大きなトラブルが起こり、約2カ月もプラントが止まってしまった。このときはさすがに自分一人では対処しきれず、上司はもちろん本社も含む総動員体制をとってもらって、何とか解決できた。経年劣化による偶発的なトラブルは、予想もできない部分で起こるため、対処が極めて困難だ。そこで求められるのは、プラント内部で進行する異変を知るための検査方法。その新しい方法を開発することが現在のテーマである。

私は、基本業務として、現在7つのプラントの保全を担当している。その上で、こうしたチャレンジをしていこうと思うと、すべてを一人でできるわけではない。チャレンジするテーマの難易度が高くなればなるほど、まわりを巻き込んでいく必要があることも学んだ。今後は、自分一人じゃできないようなプロジェクトを、もっと大きな仕事を、やってみたいと思う。

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チャレンジしていれば、
いくら困難でもストレスは感じない。
チャレンジしないことのほうがストレスだ。