My Never-ending Chemistory

日産化学のつくる化学品、農薬、医薬、医療材料の多くは、人の身体や周辺環境に深く関わる製品だ。それだけに、何よりも優先されるのが安全性。安全性研究部は、それらの安全性を司る部署である。完成品の安全性を調べるだけではなく、研究開発段階から関わっていくという、その仕事について、M.K.の話を聞こう。

私は動物が好きで獣医学科に進んだ。仕事については、“獣医など限られた道になるのかな“という程度の認識だった。大学で遠藤章先生の講演を聞いた時、それが変わった。遠藤先生は、奇跡の薬と呼ばれ世界中の何千万人もの患者の命を救っている「スタチン」を発見された方。講演では、“研究中に壁にぶつかった時、動物実験を担当した獣医師の協力によって道が開けた”というエピソードを紹介された。それを聞いて私は「獣医師も新しいモノづくりに貢献できるのか」と感激した。研究の道に進みたいと思った。

私は毒性病理学の教室に入ってドクターコースに進んだ。それによって視野が広がり、自分で考えて研究を進める力や論理的に考える力が付いたと思う。就職活動では民間企業へ行こうと決めていた。医療機器メーカーでのアルバイト経験でいろいろな分野の研究者が関わって一つのモノを創り上げていくのが楽しく、やりがいを感じられたからだ。いくつかの会社を見た中で“日産化学なら毒性病理学の分野からモノづくりに参画できそうだ”と思い、入社を決めた。

大学で学んだこと

化学物質の発がん性は通常、ラットを用いる発がん性試験により評価するが、2年間という長期間にわたり、多くの動物数を必要とすることが課題となっている。
そこで私が所属していた獣医病理学研究室では、発がん性物質を反復投与したラットを用いて遺伝子やタンパク質の発現を解析し、28日間で発がん性を評価可能なマーカーの探索を行っていた。

安全性研究部の安全性評価グループには、3つのチームがある。私のいる「一般毒性チーム」と、細胞や菌などを使って遺伝毒性の有無を評価する「変異原性チーム」、水生生物を使って環境中のリスクを評価する「水生生物チーム」だ。「一般毒性チーム」は、日産化学のつくる化学品、農薬、医薬、材料が、ヒトの身体に入ったときの安全性を研究し、毒性がある場合はその機序を解明する。哺乳類を使った実験がベースになる。

私はその中で、研究開発段階にある農薬や医薬のいくつかを担当している。開発段階に応じて基本となる試験のパッケージがあり、問題となる毒性が出てきたら追加の試験をする。その時、どのような追加試験をすればよいか。その立案や判断がとても難しいと感じている。まだ私の知識や経験では足りないので、上司や先輩からアドバイスをもらうことが多い。

1年目に担当した農薬の開発では、多くの研究員に相談し協力してもらいながらメカニズム解析など試験を進め、その結果からスクリーニング系を立ち上げることができた。大きなやりがいを感じた仕事だった。農薬や医薬の研究開発にはさまざまな分野の研究員が協力しているため、異なる知見を持ち寄って、話し合いながら方法を考え決めていくことが重要だと考えている。

私を取り巻く環境

安全性研究部には、外部の学会などに積極的に参加するという風土がある。ほとんど全員が参加し、部署が空になる時も(笑)。
私自身も、学会で最新の情報を得ながら、1年目から発表の機会をもらうなど、大いに刺激を受けている。

安全性の研究者として、私はまだまだ半人前。これからの目標はたくさんある。

身近な目標は、毒性試験のすべてをキチンと担当できるようになること。毒性試験にはたくさんの種類があり、まだ全部を網羅して経験できていない。今は先輩たちに助けてもらっている状態なので、まずは、そうした試験を責任者として担当できるようになるのが目標である。

将来的な目標は、新しい農薬や医薬の研究開発において力を発揮できる研究者になること。新薬の候補となっている化合物の開発が、実験動物による試験で毒性があらわれたことが原因でストップしてしまうことは少なくない。しかし、動物では問題になってもヒトに対しては問題がない場合もありえる。毒性が起きる機序を解明して、ヒトには問題がないことを証明できれば、大きな可能性を秘めている化合物の開発をストップさせず、開発を進めることができる。そのように開発を後押しできるような研究者になりたいと思う。

安全性研究部の上司や先輩には、幅広い知識と提案力を持った方が多く、彼らは農薬研究部や医薬研究部の研究者からも頼りにされている。私もこれから、そうした存在になっていきたいと考えている。

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新しい農薬や医薬の
研究開発において、
力を発揮できる研究者に。