男性社員が取得する育児休業。そこから生まれるものとは?実際に取得した社員に聞く。材料科学研究所。先端材料研究部。菅原峻。2015年入社。

あちこちで “男性社員の育児休業”が話題になる機会が増えてきました。考えてみればそれは、働き方改革や、ダイバーシティ、女性活躍など、さまざまな観点からとらえることができそうです。
そこで今回は、日産化学の中でも比較的早い時期(2019年)に育児休業を取得した男性社員 菅原峻に、経験談を聞いてみました。
聞き手は、現在すでに子育て中で、第2子が誕生した暁には育児休業を取りたいと興味津々の、人事部 稲葉正光。インタビューは、2021年秋に行われました。

chapter01

育休に入るまで。

  • 菅原さん、こんにちは。私は子どもが1人いるんですが、今度、もし2人目ができたら育児休業を検討したいと思っていて。今日は、育休取得の先輩である菅原さんにいろいろ聞いてみたいと思っています。

    菅原

    はい。育休取得の経験は、できれば多くの方にご紹介できればいいな、と思っていたので、私でよければ喜んでお話しします。

  • 菅原さんは当初、育休を取得する予定ではなかったそうですね。

    菅原

    そうなんです。妻は徳島県の実家への里帰り出産で、義理の両親のサポートも受けられるし、私は有給を取って行くことはあっても育休を取る必要まではないな、と考えていたんです。

  • そこまでは典型的なケースですよね。

    菅原

    ところが、妻が産後骨粗しょう症になってしまったんです。もともと骨密度は低めだったのですが妊娠・出産ですごく下がってしまって。産後に腰痛がひどくて立ち上がるのもつらかったようで、診てもらったら、腰椎と胸椎を含む5本を圧迫骨折していたと。
    そうなると、さすがに、赤ちゃんの世話と本人の介護のすべてを、義理の両親にずっと頼み続けるわけにもいかないと、育休取得を申し出たんです。

  • なんと、それは奥様もたいへんでしたね。
    それでその時点からの申請になったのですね。

    菅原

    そこは当時の上司が親身になってサポートしてくださって、育休取得の手続きと、仕事の引き継ぎの準備を終えることができ、3週間後から取得することができました。

  • なるほど。最初は育休を取らないつもりだったのに必要に迫られて取った。そうした菅原さんだから経験できた心境の変化も、ぜひ伺えればと思います。

    菅原

    わかりました。

  • 仕事の引き継ぎは問題なかったのですか?

    菅原

    当時私は、次世代材料研究部で、次世代太陽電池向けの材料開発に携わっていました。その頃、私がメインで進めていたテーマは、海外のメーカーへの提案だったので、サンプルを提出して先方で評価をしてもらって、というワークのスパンがちょっと長かったんですね。急ぎの課題が山積み、という状態ではなかったのは幸いでした。

  • 周りのみなさんの反応は?

    菅原

    やはり、みなさんのサポートが大きかったですね。チームは少人数なので、1人抜ける影響は大きかったと思うのですが、皆さん肯定的に、「家庭が大事だから、仕事忘れて専念してね」みたいな言葉をかけてくれました。

  • やさしいですね。

    菅原

    そうなんですよ。ホントにみなさんやさしくて。どうしてでしょうね。日産化学の社風なのかもしれません。

  • それで3週間後から奥様のご実家へ行くことができた、と。

    菅原

    そうですね、それから2カ月半の間、徳島にいました。

chapter02

育休中のできごと。

実際に菅原と奥さまが付けていた育児ダイヤリー
  • 実際、育休に入ってからは、どんな日々だったのですか。

    菅原

    妻が自由に身動きできる状態ではなかったので、赤ちゃんの世話の多くを妻のお母さんと私で担当していました。妻ができる範囲のことは一緒にお世話したりしていました。

  • それに加えて、奥様のお世話も?

    菅原

    そうですね。起き上がるのを手助けしたり。特に初めの頃はなかなか毎日気が休まらない状況ではありましたね。

  • 中でも、これがたいへんだった、ということは何でしたか?

    菅原

    どう乳児の世話をしたらいいか分からなかったことですね。本やネットで軽く知識は入れていたんですけど、実際やってみると別ものでした。妻や、妻のお母さんから手ほどきを受けても、なかなかできない。それが最初はしんどかったですね。

  • これだったら会社に行っているほうがラクだ、みたいな?

    菅原

    そう思ったことは確かにあります(笑)。

  • よかった点は?

    菅原

    毎日、長い時間、子どもとしっかり向き合えたのが一番よかったです。初めてうつ伏せができたとか、寝返りができたとか、何か声を出したとか、息子の成長を毎日見て、妻と共有できたのがよかったですね。

  • 奥様はどう思ってらっしゃったんでしょうか。

    菅原

    感謝してくれてたと思います。あまり面と向かっては言ってくれませんが(笑)。本人が一番つらかっただろうと思うので、ずっとそばにいることで、少しは心の支えにはなれたかな、と思いますね。

  • 育休中、仕事のほうは?

    菅原

    セキュリティの面から、会社のパソコンは持っていってはいけない、ということだったんですよ。

  • そうですね。不安になってパソコンを開きたくても、そもそもできないという。

    菅原

    そうですね。専念できたというか、専念せざるをえなかった。私の場合は、妻の状況もあって初めは余裕がなかったので、専念できたのは気持ちの面でプラスだったと思います。

  • じゃあ、会社や業務からはまったく離れた感じで?

    菅原

    上司が定期的に連絡をくださっていましたね。平均すると、10日に一度くらいでしょうか。状況を教えてもらっていたので、つながっている感はありました。

  • 育休期間が2カ月半というのは、はじめから決まっていたのですか。

    菅原

    妻の具合がどれくらいでよくなるか分からなくて、当初は暫定で2カ月の予定で、途中で様子を見て延長してもらいました。ようやく飛行機移動ができるくらいには良くなったので、みんなで一緒に戻りました。

chapter03

育休経験を振り返って。

先端材料研究部で研究にいそしむ菅原。自分が有機合成した化合物から、会社の売上に貢献できる新材料を生み出したいという思いが強いという。
  • よく「職場復帰の際に、ちゃんと戻れるのか不安だった」というお話を聞くことがありますが、そういう感覚はありましたか?

    菅原

    上司とコミュニケーションを取ってもらっていたせいか、そういう不安はなかったです。むしろリフレッシュになって、新鮮な気持ちで仕事に向かうことができましたね、その点ではプラスだったかなと。でも、最初はリズムを取り戻すのにちょっと苦労しました。それまでそんな長い休みを取ったことがなかったので。

  • 戻ってからの勤務は?

    菅原

    妻は無理ができない状態だったので、できるだけ残業はしないようにしていました。仕事に優先順位をつけて効率的に進めることができて、制約があってかえってよかったかな、と思う面もありますね。

  • 菅原さんは初め、育休を取得するつもりはなかったわけですが、そもそも育休に興味はあったのですか?

    菅原

    興味はありました。もともと子どもと接するのは好きだったので。ただ、当時は周りに育休を取った経験者がほとんどいなかったので、長い期間取得することへの精神的な壁は感じていた気がします。キャリアへ影響するのかどうかも、前例が少ないからよく分からない。そこは不安要素でしたね。

  • もし当時、男性の育休取得が一般的になっていたら、奥様のご病気がなくても申請していたかもしれない?

    菅原

    そう思いますね。そう考えれば、私のような実例が今後、何例も出てきて、ちゃんと紹介されていけば、取得しやすくなるのかなとは思います。

  • 実際、菅原さんが育休で得られたことって何ですか?

    菅原

    もし取得していなかったら、子どもを世話するスキルが低いままだったと思うんですね。そう考えると育休を取ったことで、子どもの世話をひととおり自分でできるようになったことは大きかったなと。

  • 育児のスキルを身に付けると、何がいいのでしょうか。

    菅原

    何かあっても慌てなくなったのが大きいです。子どもって突然、何かが起こるじゃないですか。食べたものを戻したとか、突然ナゾの発疹が出たとか。

  • 確かに。私も最初の頃は、いや今でも、慌てちゃいますね。

    菅原

    そういうときの経験値が、ある程度はできた。今後、妻がいないときでも、自分が子どものことちゃんと見られるぞ、という自信というか、自分に対する安心感がありますね。

  • それは奥様にとっても安心ですよね。

    菅原

    そうですね。私事ですが、兄がいて、とても子ども想いなのですが仕事が忙しくてなかなか育児を手伝えず、オムツもほとんど換えたことない、みたいな人なんです。兄の奥さんに聞くと、慣れてないから任せにくいし、どうしても任せなきゃならないときに心配でストレスを感じる、と言うんですね。

  • なるほど。子育ての実務負担のありなしだけではなく、精神的な負担のありなしも、大きな違いになるのですね。

    菅原

    そういう意味でも、男性も育児のスキルは身につけるほうがいいと思います。自分で体験して、やはり大変だったので、この育児のスキルを女性だけにつけてもらおうっていうのは、ちょっと旧世代的だと思うようになりましたね。社会も徐々に変わってきているとは思いますけど。

  • そうですね、会社としても、より制度を整えようとしています。

    菅原

    それはいいですね。制度ももちろん大切ですけど、もっと大切なのは意識だと思います。社会的にも、会社としても、制度が増えてきたようですけど、それだけじゃ足りないというか。たとえば、私の父なんかも「男はしっかり仕事してればいいんだ」みたいな価値観がまだあって、世代間ギャップみたいなものも感じます。やはり意識の面でもみんなが変わっていくことが必要でしょうね。私の場合は周囲の方々に恵まれていましたけど。

chapter04

育休経験の、これから。

菅原のご長男は2歳半。もうすぐお兄ちゃんになる。
  • 育休取得から2年。今、ご家庭は?

    菅原

    子どもは今2歳半で、おしゃべりがすごいです(笑)。会話が通じるようになってきたので、また新しい面白さがありますね。

  • 仕事のほうはどうですか。

    菅原

    先端材料研究部で新材料を研究しています。自分が有機合成した化合物から、なんとか会社の売上に貢献できる材料を生み出したいですね。その思いが強くなっています。

  • 今は、勤務のリズムはどんな感じなのですか。

    菅原

    実は今、妻が第二子を妊娠していまして。それもあって、できるだけ残業しなくてすむように気をつけていますね。

  • よかった。奥様のご病気のほうも順調に回復されたのですね?

    菅原

    完全な回復はかなり難しいんですけど、出産しても大丈夫という状況にはなりました。

  • 育休取得経験について、社員の誰かに話す機会はあったのですか?

    菅原

    奥さんの出産を控えた方が2人、話を聞かせてほしいと来ました。彼らが実際に取得をするかどうかは置いておいても、参考にできる話を聞けることは良いことだと思うので、これからも機会があれば自分の経験を伝えたいですね。

  • 育休の経験は今後の働き方などの価値観に影響しそうですか。

    菅原

    そうですね、私自身の価値観は、変化したというよりは、幅が広がったような感じがします。今後、私の周りでも、これまで以上に多様な価値観で働く人が出てくるだろうと思いますが、その時に、その人の思いに歩み寄れるんじゃないかと思います。

  • なるほど。自分が価値観の幅が広がるような経験をしたことで、一緒に働く人の価値観に寄りそうことができそうだ、と。そうすれば、仕事場がこれまで以上に、それぞれの個性や持ち味を発揮して働ける場所になっていきますよね。うーん、私もますます育児休業をしてみたくなってきた(笑)。

    菅原

    取得されたら、ぜひ、稲葉さんの経験談も聞かせてください(笑)。