My Never-ending Chemistory

農業化学品事業部の中で、海外本部はその名の通り海外のマーケットにおける営業活動や企画管理を行う部署だ。持ち前の語学力と、これまでに培った幅広い視野を活かして、日産化学の製品を海外に届けるために奮闘するT.K.。化学メーカーの中で、事務系の人材として、本社の事業部で活躍するとはどういうことなのか。奮闘するT.K.の仕事を通じて、見てみよう。

私は入社後、まず工場に配属となり、経験を積んでから、農業化学品事業部の現海外本部に異動となった。異動してから3年ほどは、企画管理と、中国・オーストラリアの営業担当を兼務した。

企画管理とは、さまざまなリスクを事前に洗い出し、最適な事業運営を推進する部署だ。本部署では海外子会社や予実算の管理などの業務に加え、農薬のサプライチェーンを管理し、メーカーとしての供給責任を果たす仕事にも従事した。販売する農薬の、世界の各拠点における在庫や、今後の生産計画・販売計画などを考え合わせ、製品を過不足なく流通させていくための検討を行うが、農薬によっては世界50カ国以上で販売されている製品もある。もしそのプランニングや管理がうまくいかなければ、世界のある地域に、その農薬をそのシーズンには供給できない、といった事態を招きかねない。いわば“世界の食糧事情を左右する”という責任の重さを感じながら取り組んでいた。また、この業務には、顧客、工場、物流のパートナー会社など社内外の多くの人が関わる。それぞれの立場や想いを理解して最適な選択を見出すことも心がけていた。

生産や流通、販売について、すべてを総合的に把握し、管理する必要があるのだ。若手社員には難しい仕事だったが、それに真剣に取り組むことで、広い視野が養われ、いわば、“経営者の目”で事業を見ることができるようになったと思う。

大切にしていること

入社当初の配属は、富山工場の人事担当だった。工場勤務という全く初めての環境に、最初はとまどった。だが、管理のオフィスにこもっていないで、とにかく生産現場に足繁く通い、現場の社員とコミュニケーションをとることを意識した。そのときに身につけた姿勢は、現在の海外営業の仕事でも基礎となっていると思う。

一方、海外営業担当としては、中国とオーストラリアを担当した。農業化学品事業部は、それぞれの国で、現地の販売代理店と契約をしている。私は日常的に彼らとメールや国際電話で打ち合わせを行い、定期的に現地を訪れては、ともに営業活動を行う。たとえば中国では、代理店が省や県単位で存在している。毎月のように中国に渡航し、1週間程度滞在して数カ所の代理店を訪問する。そこでは、担当者とのミーティングを行い、今後の普及・販売戦略を練ったり、成果や課題を確認したりしながら、その地域で、より多くの製品を、適切に販売できるように推進していく。

大切なのは、コミュニケーションだ。学生時代に、英語だけではなく中国語も学んではいたものの、相手の文化や考え方も踏まえ、ビジネスレベルでコミュニケーションを図れるレベルまで達していなかった。そのため初めの頃は、特に中国で、顧客との関係をいま一つ深め切れていないと感じることがあった。そこで、社内の制度を利用して、中国へ語学留学をした。実際に現地で生活することで、中国語のスキル向上はもちろん、中国の文化や価値観を学ぶことができた。留学を終えてから、以前よりも顧客との距離を近付けることができたと実感している。

私を取り巻く環境

海外本部の仕事の中では製品の開発や登録の業務にも携わる機会がある。本社の事業部という立場から、どんな農薬をどのように開発していくのか、それをどの国でどのように登録して、販売できる状態へと持っていくのかを他部署と議論し、実際に研究開発する物質科学研究所や生物科学研究所と協働して、進めていく。開発初期から販売までの一連の業務に関わりを持つことができ、より視野を広げることができた。

中国市場へは、私が担当してから、これまで4つの農薬を上市してきた。問題なく順調に成長している製品もある一方、トラブルが起こることもある。水稲用除草剤「アルテア」は、現地試験で期待された効果が発揮されないことがあった。急遽、生物科学研究所から研究員に同行してもらい調査に赴くと、製品自体の特性のみでなく、激しい温度変化により作物に負荷がかかることが主要な原因だと分かった。中国は広大で、気候や土壌など作物の生育条件が実に幅広いため、地域ごとに適切な使用法の確立と管理をしなければ、今後もそうした事態が起こりかねない。正しい普及に向けた会議を行い、現地代理店の販売・普及担当者に対して、製品の特徴と使用法を徹底してもらった。その後は順調に販売が伸びている。

ここ数年、私は営業に専任となり、現在では中国、オーストラリアの他に、台湾、ベトナム、タイ、フィリピン、そしてニュージーランドも担当している。それぞれの国の農業には、それぞれの課題があり、どの農薬をどのように拡販していくか、テーマが異なる。出張の頻度も格段に増え、仕事は忙しいが、面白くて仕方がない。現在はこれまでの中国での販売経験を活かして、他国でも各剤の拡販に邁進しているところだ。

担当する国に行く時には、実際に製品の使われている農場を訪問し、農家の方から直接話を聞くことも少なくない。日産化学の農薬が、いかに世界のさまざまな地域で使われ、世界の食のために役立っているかを確認することができる貴重な機会だ。そのたびに、自分たちの仕事の責任の重さと、やりがいの大きさを実感している。これからも、日産化学が造った優れた農薬を、これまでに培った経験も活かして、少しでも多く、必要としている人に届け続けたいと思う。

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世界の農業にどのように貢献できるか。
自分なりの答えを探し続け、海外を飛び回る。