社員の話を聞く
日産化学の工場には、高温・高圧の大規模プラントからクリーンルーム内の先進機器まで、
多種多様な設備がある。機械系の技術者は、その建設・設置から、日々の運用、
メンテナンスや改良工事にまで、広く関わる。巨大で複雑なプラントを任される仕事は幅広く、
重要だ。富山工場で活躍するK.M.は、まず最近あったトラブルの話から始めた。
私が保守を担当しているアンモニアプラントの熱交換器から流体が漏洩し、プラントが全停止するという大きなトラブルが発生したのです。
今回のトラブルは定期点検で検査した設備だったため、想定外でした。
富山工場で、アンモニアは基幹プラントの一つ。その生産が止まるとアンモニアを原料とするメラミンや尿素といった他の生産もできなくなります。停止期間が長引けば全社の事業運営に大きな影響を及ぼすため、一日でも早く修復する必要がありました。修復に際してさまざまなケースを想定しスケジュールを調整して昼夜を徹して修復にあたりました。
その期間は担当のメンバーが交代ですべての作業に立ち会いました。無事にプラントが再稼働できたときには本当にホッとしました。
自分の任せられた化学プラントを安全、安定に稼働させるため、私たちは日ごろから全力で取り組んでいます。それでも全てが計画通りに進むわけではありません。
そうした想定外のことが起きった時こそ日ごろからの仕事への取組み方が問われます。常に「何をすべきか」「なぜそうすべきか」を考えて動くよう指導されてきたことが活かせたと思います。
私が担当するアンモニアプラントも設置後50年近くが経過。プラントは多くの設備で構成されており、その中には数十年経過しているものもありますが、一つの設備で数千万~数億円するような機器もあり、古いからという理由だけで簡単に更新できるものではありません。
それでも金属でできた設備は経年劣化します。私たちが毎日のパトロールや毎年の定期修理で状態をチェックし、そのうえで補修や更新する必要がある設備は綿密に計画を練り、メーカーとも連携して設計し、強度計算などのチェックをしたうえで実行します。
このように、中長期にわたる保全方針を策定し、プラントを安全・安定的に操業することが私たちに課された最大の使命です。
日本にあるアンモニア生産プラントの多くは、当社と同じ頃に建設されています。共通する課題も多いため、各メーカーの技術者が集まって話し合う「アンモニア製造技術部会」が年1回設けられています。そうした場に出席し他社の技術者から知見を集めながらプラントの将来を考え続けるのも私たちの仕事なのです。
私がこの仕事で最も大きな喜びを感じるのは、関わっているプラントの「機械としてのスケールの大きさ」を感じるときです。
メーカーの技術者や作業員、社内の様々な人と協力しながら設備の更新や新設の計画を完遂させ、圧倒的に巨大な設備が無事に稼働した時の喜びは何物にも代えがたいものがあります。
例えば、アンモニアプラントで最も高温となる機器の耐火材の更新を担当しました。金額にして数千万円の工事であり、1968年以来、初めての更新であったことから、当時の設計思想を元にメーカーと何度も打合せを行いました。それだけに、プラントがうまく立ち上がるか、トラブルが起こらないかとスタートアップの数日間、ずっとドキドキしていました。無事に立ち上がったことが確認できたときには本当にうれしかったですね。
プラントの保守には機械の知識はもちろんボイラーや高圧ガスなどの知識や公的資格が必要な場面が多々あります。だから日々の仕事の他にも勉強が欠かせません。私も入社以来毎年試験を受けてこれまでに8つの資格を習得しました。試験前は業務の後で毎晩勉強するので大変ですが苦になりません。なにせ自分たちはスケールの大きなプラントを任されている「機械屋」ですから。
- 私の学生・院生時代
- 大学院では金属の超音波接合を研究。実は化学があまり得意ではありませんでした(笑)。化学メーカーでやっていけるか心配もありましたが、得意の機械の知識を活かすことで、会社に貢献できていると思います。もちろん化学の勉強も続けていますよ。
- 大切にしていること
- いつも気をつけているのは「真実を伝える」こと。ひとつ間違えれば大きなトラブルが起こりかねないプラントを、“化学屋”や“電気屋”、私たち“機械屋”が協力して支え合っていくので、日常のコミュニケーションを密にし、考えを明快に伝えることが大切ですね。
私のNever-ending Chemistry
- 巨大なプラントが
計画どおりに動き出すときの感動を
味わい続けたい。